【フランスに旅立った小野寺修二(おのでらん)がつづる「日々不条理日記」】 - 特集ページ - 演劇ポータルサイト/シアターガイド
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シアターガイド×アーティスト シリーズ vol2

フランスに旅立った小野寺修二(おのでらん)がつづる

日々不条理日記

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写真/1月某日

バターを買いに行く。店の正面の棚に巨大な乳白色の塊があり、そこから一すくい包んでもらうのだ。私はその光景を思い浮かべ、うっとりとする。

バター屋の前に着くと、狭い店頭に人がみっしり溜まっている。大勢の人だかりで、中を伺い見ることが出来ない。人だかりはなぜか全て男たちで、列をなさず、ぐっちゃり並んでいる。一番後ろにつくと、前の男の肩越しに前方を覗いた。全く予想もしなかったことだが、たいそうな騒ぎになっている。騒ぎが過ぎ、何人かはクルクル回っている。これは長くかかりそうだな。私は腹を決めて待つことにする。私はただ、バターが100g欲しいだけなのだ。喧噪の先には、白衣を着た男が一人、バターを売りさばいているはずだ。

群は一向に進まない。よく見ると、バターなど売られてないことに気付く。白衣の男はにこやかに最前列の男と話をしているだけなのだ。やられた。私は憤慨しその場を立ち去ろうとする。一瞬、白衣の男がこちらを見やる。男は片目をウインクした。その瞬間、周りの男たち全てが消え去り、白衣の男と2人きり、私はそこに取り残されている。広い静寂があたりを包む。突然の好機に、しかし私は言葉が出てこない。身振り手振りを交え、何とかバターを100g手にする。店を出る。

張り付いた笑顔を剥がすと、下から真っ赤な顔が現れる。握り過ぎで、バターは半分溶けかかっている。

プロフィール

小野寺修二
(おのでら・しゅうじ)

小野寺修二プロフィール画像

北海道生まれ。学生時代から演劇活動を始める。

3年間の社会人生活を経た後、日本マイム研究所に入所。独自のマイムを目指して、95年に、同研究所で出会ったメンバーとともに「水と油」を結成。

メンバーそれぞれのキャラクターと、何気ないマイムのコンビネーションで断片的なシーンを重ね、ダンスのようなリ ズム感と喜劇のようなユーモアを合わせ持ったユニークな作風が、大きな反響を得る。創作過程では、主にシーンの物語部分を担当。

発表する新作が常に高い評価を得ていたが、06年3月に「水と油」の活動を休止。現在、文化庁の「新進芸術家海外留学制度」の支援を受け、フランス・パリで修行中。