【フランスに旅立った小野寺修二(おのでらん)がつづる「日々不条理日記」】 - 特集ページ - 演劇ポータルサイト/シアターガイド
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シアターガイド×アーティスト シリーズ vol2

フランスに旅立った小野寺修二(おのでらん)がつづる

日々不条理日記

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写真/2月某日...その2

相手が私に向かって話をしている。周りの人も私を見ている。だが、私はキーになる単語の意味がどうしても分からない。あるいは、いちかばちかで憶測した意味が全く見当違いで、とんでもない所まで漕ぎ出してしまっている。目標になるような漂流物は見当たらず、見渡す限りの大海である。私は無闇に漕ぎだせず、だらしなく波間を漂う。

ある女の人がすっと立ち上がる。見かねて助け舟を出してくれたのだ。彼女は果敢な行為を誇示することなく、面映そうに輪から離れ私に近付く。そしてこちらの耳にそっと口を寄せた。

「…、………。」驚いて女を見る。女は真剣な顔でこちらを見ている。私は何も答えられず戸惑う。それを見て、先ほどよりは少し大きな、しかし他の誰にも聞こえない音量で彼女は再び声を放つ。

何を言っているのか全く分からなかった。言い足すとそれは文を成していないのだ。私はあきらめず推し量るが、ひたすら分からない。一体何を言いたいのだろう。面映そうにわざわざ出てきて何をどうしようというのか…。私は女を傷つけまいという意識と、真意を図る気持ちに揉まれ、気付くとまた大海にいる。

先ほどよりも、更に一人であることが分かる。遠くのほうで私に向かって、再度問う声が聞こえる。みなの視線が集まってくる。いつの間にか、女の尽力により私は確実に救い出され、後は私の帆走を待つのみという状況が出来上がっている。

どっちに向かって漕ぎ出そう。なぜか急遽守らなくてはいけない大きな荷物を横に抱え、私はただただ波間を漂う。

プロフィール

小野寺修二
(おのでら・しゅうじ)

小野寺修二プロフィール画像

北海道生まれ。学生時代から演劇活動を始める。

3年間の社会人生活を経た後、日本マイム研究所に入所。独自のマイムを目指して、95年に、同研究所で出会ったメンバーとともに「水と油」を結成。

メンバーそれぞれのキャラクターと、何気ないマイムのコンビネーションで断片的なシーンを重ね、ダンスのようなリ ズム感と喜劇のようなユーモアを合わせ持ったユニークな作風が、大きな反響を得る。創作過程では、主にシーンの物語部分を担当。

発表する新作が常に高い評価を得ていたが、06年3月に「水と油」の活動を休止。現在、文化庁の「新進芸術家海外留学制度」の支援を受け、フランス・パリで修行中。