【フランスに旅立った小野寺修二(おのでらん)がつづる「日々不条理日記」】 - 特集ページ - 演劇ポータルサイト/シアターガイド
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シアターガイド×アーティスト シリーズ vol2

フランスに旅立った小野寺修二(おのでらん)がつづる

日々不条理日記

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写真/2月某日...その4

横で人が捕まる。

何事もない穏やかな昼下がり、人々は気付かないのかそれとも当たり前すぎたのか、気にかけず通り過ぎていく。その瞬間も、その前も後も空気は微動だにしなかった。ただ私だけが目撃する。

私は間が悪く、立ったまま肉を食べている。ピリッと緊張した空気が流れたその瞬間、ソフトにだが厳重に獲物は取り囲まれている。不条理に世界が反転したにもかかわらず、獲物は身に起きたこと全てを悟る。その後の仕打ちについても。どの通行人とも変わらない一通行人だった自分が、特別な存在になったことが分かる。逃げよう。だが逃げよう、が筋肉に伝わる前に彼は諦める。逃げられない、知ったのだ。

かくして、暴力は持ち出されることなく決着がつく。点から後、彼は罪人となる。

私はその場を離れたい。私は、私だってあの輪で囲まれたら最後、彼となることを知っている。全く身に覚えはない。身に覚えがなくたって、だ。

下手に動いて空気を動かしてはいけないと思う。私は早くこの場を離れたいが、動けずにいる。存在をひた隠しにし、やり過ごさなくてはいけない。息をひそめる。ふと、手にしている肉の塊が警官を刺激することに気付く。肉からは匂いが立ちのぼっている。息を殺してじっとしている手の中で、生々しく存在を主張し続けている。この匂いをどうしてくれよう。私は自分の口に押し込む。噛まずにどんどん飲み込む。口から汁が垂れ、手を伝い床にこぼれ落ちる。それでも食べる。食べても食べてもその塊は一向に減らない。もしかしたら警官はもう気付いているかもしれない。それでも私は無邪気に格闘する振りをする。

誰も見ていないのに、私の演技は続く。

プロフィール

小野寺修二
(おのでら・しゅうじ)

小野寺修二プロフィール画像

北海道生まれ。学生時代から演劇活動を始める。

3年間の社会人生活を経た後、日本マイム研究所に入所。独自のマイムを目指して、95年に、同研究所で出会ったメンバーとともに「水と油」を結成。

メンバーそれぞれのキャラクターと、何気ないマイムのコンビネーションで断片的なシーンを重ね、ダンスのようなリ ズム感と喜劇のようなユーモアを合わせ持ったユニークな作風が、大きな反響を得る。創作過程では、主にシーンの物語部分を担当。

発表する新作が常に高い評価を得ていたが、06年3月に「水と油」の活動を休止。現在、文化庁の「新進芸術家海外留学制度」の支援を受け、フランス・パリで修行中。