【フランスに旅立った小野寺修二(おのでらん)がつづる「日々不条理日記」】 - 特集ページ - 演劇ポータルサイト/シアターガイド
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シアターガイド×アーティスト シリーズ vol2

フランスに旅立った小野寺修二(おのでらん)がつづる

日々不条理日記

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写真/3月某日...その3

食卓を囲む。

今日は同居人の娘の誕生日だ。「たいしたものはないですよ。」という誘いに安心し、気軽な気持ちで出席する。娘は緊張した面持ちで宴が始まるのを待っている。

今日の主役は彼女なのだ。じきに料理が運ばれてきて、宴が始まる。たいしたものではないという言葉と裏腹に、大量の見たこともない料理が運ばれてくる。戸惑いながらも、周りに合わせ食べ始める。宴は多いに盛り上がり、笑い声が絶えない。色々な話題が出る中、大家であるマダムが、今日メトロで会った男の話を始める。顔の幅が普通の半分で後頭部が異常に長い男の話を。一同驚きとともに、ことの真偽を問う声が飛びかう。そんな中、娘が小さな声で誕生日の歌を歌い始める。彼女の小さな抵抗に、大人たちは慌てて本来の主役を持ち上げはじめる。

突然、電気が消える。娘と私を残し、皆いなくなる。私は戸惑いながらも、覚えたての祝いの言葉を彼女に贈る。彼女はすました表情で「ありがとう。 ムッシュー」と答える。妙にすましたその態度に、私は吹き出しそうになる。

遠くから歌声が聞こえてくる。先ほど娘が歌っていた聞き覚えのある歌である。歌詞がわからないので、ハミングする。8本のろうそくが灯ったケーキとプレゼントが運ばれてきて、娘は目の前の炎を一息に吹き消した。拍手が周りを包む。私もあわてて拍手をする。気のせいか、拍手の数が多いような気がした。

明かりがつくと、プレゼントを開けている娘は成人した女性になっていた。手にしたプレゼントからは立派なドレスがでてくる。それを羽織ってモデルのように歩き、ウインクする娘。そして次に、私のささやかなプレゼントを開ける。子どもが喜びそうなものを見繕ったのだが、今の彼女にはいかにも不釣り合いに見えた。

「ありがとう、ムッシュー。」

私のプレゼントを開けた瞬間、彼女はいつもの姿に戻っている。皆の笑い声に、愛想笑いをしながら私は軽くまぶたを押さえ食事を始める。ふと辺りを見回すと、皆、細長く後頭部が長い顔をして笑っている。

プロフィール

小野寺修二
(おのでら・しゅうじ)

小野寺修二プロフィール画像

北海道生まれ。学生時代から演劇活動を始める。

3年間の社会人生活を経た後、日本マイム研究所に入所。独自のマイムを目指して、95年に、同研究所で出会ったメンバーとともに「水と油」を結成。

メンバーそれぞれのキャラクターと、何気ないマイムのコンビネーションで断片的なシーンを重ね、ダンスのようなリ ズム感と喜劇のようなユーモアを合わせ持ったユニークな作風が、大きな反響を得る。創作過程では、主にシーンの物語部分を担当。

発表する新作が常に高い評価を得ていたが、06年3月に「水と油」の活動を休止。現在、文化庁の「新進芸術家海外留学制度」の支援を受け、フランス・パリで修行中。