【フランスに旅立った小野寺修二(おのでらん)がつづる「日々不条理日記」】 - 特集ページ - 演劇ポータルサイト/シアターガイド
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シアターガイド×アーティスト シリーズ vol2

フランスに旅立った小野寺修二(おのでらん)がつづる

日々不条理日記

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写真/5月某日...その1

休みの日。人の声を聞こうとカフェに行く。いい加減、日常会話のスピードに慣れなくてはいけない。ゆっくり言い含めるように話してくれる、私の周りの親切な人々の配慮に甘えてばかりはいられない。街に溢れる生きた会話を盗み聞くのだ。気付かれないよう真剣に聞く。しかし、脈絡も関係性も不明に聞き始めた会話は、なかなか深層がつかめない。

隣に2人の男が座る。何ということのない世間話をしている。話はそのまま女の話に流れ、下卑た笑いを時折混ぜながら熱心に話し続けている。が、途中まではっきり見えていた道筋が、ある時急に見えなくなる。耳に神経を集中し、行間を探る。一瞬、片方の男と目が合った気がした。少しのめり込み過ぎたか。私は本に視線を落とす。と突然、口論が始まる。しばらく声を荒げ話していたが、一人が席を立ち、そしてもう一人が後を追いかけ店を出る。私は唖然と2人を見送ると、効果が薄そうなこの方法をあきらめカフェを出る。

私の身構えが、無意識のレベルで口論の引き金になったかもしれない。路上では先ほどの2人が口論を続けている。その脇 を通り抜け、目的なくメトロに乗りこむ。路線図を見ながら行き先を決め、駅名を復唱していると、後ろから聞き覚えのある声がする。先ほどの2人が同じ車両に乗っている。私は奇妙な偶然に驚き、行き先を変更し次の駅で降りることする。すると2人も降りてくる。口論は止み、思いつめた顔で私の後を歩いてくる。もしや聞い てはいけない話だったのか。少し小走りに改札を抜け、すぐ目の前にあったカフェに入る。男たちはカフェを素通りし街中に消えていった。コーヒを頼み、時間をつぶす。学習のためとはいえ、盗み聞きはまずかろう。自省する。何か違う方法を考え出そうと思う。

しばらくしてふと気付くと、遠くの席で聞き覚えのある声が口論をしている。私は、怖くてもう後ろを振り返れない。

プロフィール

小野寺修二
(おのでら・しゅうじ)

小野寺修二プロフィール画像

北海道生まれ。学生時代から演劇活動を始める。

3年間の社会人生活を経た後、日本マイム研究所に入所。独自のマイムを目指して、95年に、同研究所で出会ったメンバーとともに「水と油」を結成。

メンバーそれぞれのキャラクターと、何気ないマイムのコンビネーションで断片的なシーンを重ね、ダンスのようなリ ズム感と喜劇のようなユーモアを合わせ持ったユニークな作風が、大きな反響を得る。創作過程では、主にシーンの物語部分を担当。

発表する新作が常に高い評価を得ていたが、06年3月に「水と油」の活動を休止。現在、文化庁の「新進芸術家海外留学制度」の支援を受け、フランス・パリで修行中。