【フランスに旅立った小野寺修二(おのでらん)がつづる「日々不条理日記」】 - 特集ページ - 演劇ポータルサイト/シアターガイド
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シアターガイド×アーティスト シリーズ vol2

フランスに旅立った小野寺修二(おのでらん)がつづる

日々不条理日記

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写真/5月某日...その2

決戦の日である。数日前から大家のマダムが街中大騒ぎになるよと言っていた。そんな中、外に出る。近くの美術館で友人が作品を発表するので、それを見せてもらうのだ。美術館の裏口から入り、警備員に付き添われ展示する部屋に入る。

友人は壁に向かって黙々と作業をしていた。彼の友人たちが、彼のつくったオブジェを慎重に組上げている。美術館は通常通り営業をしていて、その作業横を多くの来館者が通り過ぎる。多くの人がその作業に興味を抱き、立ち止まる。本来であれば、部屋にいる警備員が彼らを誘導するはずなのだが、友人の作品が気に入ったらしく、質問ばかりして自分の仕事に戻らない。結局その仕事は私たちの仕事となっている。予定があったので、そこそこに美術館を離れることにする。友人が、出口まで見送ってくれ照れ臭そうにお礼を言う。その態度はとても共感出来る気がした。

幾つかの用を済まし、街を歩く。未だ、街は静かである。しかし、その裏でいくつもの思いが交錯していることを考えると、いつ爆発が起きてもおかしくはない。カフェに入る。まばらなお客である。いつもの休日と変わらない。TVで決戦の様子を伝えている。私はぼんやりと、とりとめのないことを考える。政治、芸術、移民問題…。行き先の分からないもやもやしたものを捕まえようと必死になる。

瞬間、奇声があがる。決戦の結果がでた。いつの間にかカフェは人で一杯になっている。TVは街の喧噪を映し出す。歓喜しているもの、落胆しているもの。しかし、私の目の前の人々は落胆とも喜びとも計り知れぬ顔で画面を見ている。家に帰るとマダムも先ほど見た人々と同じ顔をしてTVを見ている。TVの中の街は大騒ぎだ。部屋に入って、街を眺める。街は依然静かである。いつもと変わらない。そして、友人はまだ壁に向かって作業をしているだろう。

プロフィール

小野寺修二
(おのでら・しゅうじ)

小野寺修二プロフィール画像

北海道生まれ。学生時代から演劇活動を始める。

3年間の社会人生活を経た後、日本マイム研究所に入所。独自のマイムを目指して、95年に、同研究所で出会ったメンバーとともに「水と油」を結成。

メンバーそれぞれのキャラクターと、何気ないマイムのコンビネーションで断片的なシーンを重ね、ダンスのようなリ ズム感と喜劇のようなユーモアを合わせ持ったユニークな作風が、大きな反響を得る。創作過程では、主にシーンの物語部分を担当。

発表する新作が常に高い評価を得ていたが、06年3月に「水と油」の活動を休止。現在、文化庁の「新進芸術家海外留学制度」の支援を受け、フランス・パリで修行中。