【フランスに旅立った小野寺修二(おのでらん)がつづる「日々不条理日記」】 - 特集ページ - 演劇ポータルサイト/シアターガイド
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シアターガイド×アーティスト シリーズ vol2

フランスに旅立った小野寺修二(おのでらん)がつづる

日々不条理日記

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写真/5月某日...その3

映画館に行く。観たい映画があったのだ。地図を片手に映画館を探す。見つからない。辺りは、扉がぴたりと閉まった建物が並ぶだけだ。地図と住所を見てしばし途方にくれる。脇を買い物カートを押した老夫婦が通る。住所を示し、道を尋ねる。二人は顔を見合わせ笑いだす。そして、ついて来いと言うと、さっさと歩き出した。

二人の後ろをついて歩く。道すがら矢継ぎ早に質問される。「日本?」「映画をよく観るのか?」「この監督が好きか?」私はひたすら「はい。」と答える。気付くと小走りをしている。到底老人の歩くスピードではない。いくつかの路地を抜け、古びた映画館につく。軽く汗をかいている。どうやら、住所が間違っていたらしい。二人と握手をして別れ、映画館に入る。

小窓のついた小さな部屋があり、そこで切符を買う。思っているよりだいぶん安い。中に入ると、一組の男女と寝ている男がいるだけだった。小さな映画館である。映画が始まる。字幕付きなのだが、字幕の早さについていけない。途中であきらめ、画を追い監督の世界に浸る。むしろ状況が事細かに理解できる。ハッピーエンドではないが、満ち足りた気持ちになり映画館を出る。異国にいるのに、映画を通して旅をしたいとはどういう心境だろう。

後ろから呼び止められる。振り返ると、切符売場の部屋の中に先ほどの夫婦が笑いながら座っている。二人でいるには狭そうに感じた。彼らは「良かったか?」と聞く。私は良かったことを伝え、また来ますと言った。二人は顔を見合わせ、どことなく寂しい感じで笑った。

プロフィール

小野寺修二
(おのでら・しゅうじ)

小野寺修二プロフィール画像

北海道生まれ。学生時代から演劇活動を始める。

3年間の社会人生活を経た後、日本マイム研究所に入所。独自のマイムを目指して、95年に、同研究所で出会ったメンバーとともに「水と油」を結成。

メンバーそれぞれのキャラクターと、何気ないマイムのコンビネーションで断片的なシーンを重ね、ダンスのようなリ ズム感と喜劇のようなユーモアを合わせ持ったユニークな作風が、大きな反響を得る。創作過程では、主にシーンの物語部分を担当。

発表する新作が常に高い評価を得ていたが、06年3月に「水と油」の活動を休止。現在、文化庁の「新進芸術家海外留学制度」の支援を受け、フランス・パリで修行中。