フランスに旅立った小野寺修二(おのでらん)がつづる
日々不条理日記
![]() 目の前は断崖である。そこに私はタキシードを着て立っている。足下から、一本のロープが伸びている。その先は崖下に繋がり、海面から首だけ出した人々が興味深そうにこちらを見ているのが見える。このロープを伝って下りろということか? 分からぬまま振り返ろうとした瞬間、後ろから押され空中に放り出される。かろうじて右手でロープをつかみ転落を免れた。 目が覚める。脱いだ上着をしっかり握り締めた状態で硬直している。ハッと我にかえる。昨夜サーカスをやっている友人の話を聞いたせいだろうか? いやな汗をかいている。時計を見ると稽古に行く時間が迫っている。着替えをすませ稽古場に向かう。着くと、部屋の角に見知らぬ男が座っている。正装をし、真っ直ぐ前を向いている。見学をするということだったが、気付くと稽古に参加している。 二人組で行う稽古が始まり、しばらくすると男が相手の女ともめている。どうやら、着ている背広が邪魔で動けないらしい。突然女の奇声があがる。見ると男が刃物の様なものを持ち出している。慌てて皆で止めに入る。私もその群の中に交じる。何とか刃物を取り上げることが出来た。私はベッドの上でスチールを握った状態のまま硬直している。 再び我にかえる。時計を見ると稽古へ行く時間が迫っている。慌てて着替えをし、稽古場に向かう。着くと、見知らぬ女が友人たちと話をしている。軽く会釈すると、わたしの分かる言葉で「見学させてもらいます」と言う。私は硬直したまま、頷く。 |
プロフィール小野寺修二 北海道生まれ。学生時代から演劇活動を始める。 3年間の社会人生活を経た後、日本マイム研究所に入所。独自のマイムを目指して、95年に、同研究所で出会ったメンバーとともに「水と油」を結成。 メンバーそれぞれのキャラクターと、何気ないマイムのコンビネーションで断片的なシーンを重ね、ダンスのようなリ ズム感と喜劇のようなユーモアを合わせ持ったユニークな作風が、大きな反響を得る。創作過程では、主にシーンの物語部分を担当。 発表する新作が常に高い評価を得ていたが、06年3月に「水と油」の活動を休止。現在、文化庁の「新進芸術家海外留学制度」の支援を受け、フランス・パリで修行中。 |
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