【フランスに旅立った小野寺修二(おのでらん)がつづる「日々不条理日記」】 - 特集ページ - 演劇ポータルサイト/シアターガイド
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シアターガイド×アーティスト シリーズ vol2

フランスに旅立った小野寺修二(おのでらん)がつづる

日々不条理日記

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写真/7月某日...その1

劇場に行く。チケットは持っていない。何とかなるだろうと甘く考えていたが、チケットは完売しており、入り口は沢山の人で溢れかえっていた。

チケット求むと書いた紙を持ち、立っている人が見える。今日の公演の何たるかを知らずふらり立ち寄っただけなのだが、俄然観てやろうという気になり、私も同様の紙を持ち、立ってみる。しばらくすると男が一人寄ってきた。手には複数のチケットを持っている。金額を聞くと法外な値段である。しばらく交渉するが相手も譲らず、呆れた顔で去っていく。こちらはこの公演に思い入れがないので強気なのである。

開演時間が近づくが、紙を持った人の数はなかなか減らない。先ほどの男がまた寄って来る。今度は、当日券の値段で売ってやると言う。チケットを見るとそれより安い値段が書かれているのが見えた。迷ったが、購入することにする。少し後味悪かったが、劇場の入り口をくぐると、その気持ちも消えた。

指定された席に着くと隣の男が話かけてくる。「いくらで買った?」どうやら、私が男から購入するところを見ていたらしい。金額を言うと、いたく残念そうな顔で「それはひどい」と言う。彼は几帳面に自分のチケットのしわを何度も伸ばしながら、買い方によっていかにチケットが安く買えるかを教えてくれる。今日の思いつきをまた少し反省する。

公演が始まる。私の予想に反し、たいそうおもしろい演目だった。ぐっと身を乗り出し観る。隣の男は終始退屈そうである。途中何度も時計を見ている。そしてカーテンコールが始まると早々に席を立ち帰って行った。ひとしきり挨拶が終わり、席を立とうとすると興に乗った演者が即興で簡単な出し物を始める。それもまた良い。大喝采の中、隣の男はもうとっくに劇場を出て家路を急ぎ、彼のスタンプラリーがまた一つ進んだことに満足しているのだろうか、と思う。

プロフィール

小野寺修二
(おのでら・しゅうじ)

小野寺修二プロフィール画像

北海道生まれ。学生時代から演劇活動を始める。

3年間の社会人生活を経た後、日本マイム研究所に入所。独自のマイムを目指して、95年に、同研究所で出会ったメンバーとともに「水と油」を結成。

メンバーそれぞれのキャラクターと、何気ないマイムのコンビネーションで断片的なシーンを重ね、ダンスのようなリ ズム感と喜劇のようなユーモアを合わせ持ったユニークな作風が、大きな反響を得る。創作過程では、主にシーンの物語部分を担当。

発表する新作が常に高い評価を得ていたが、06年3月に「水と油」の活動を休止。現在、文化庁の「新進芸術家海外留学制度」の支援を受け、フランス・パリで修行中。