【フランスに旅立った小野寺修二(おのでらん)がつづる「日々不条理日記」】 - 特集ページ - 演劇ポータルサイト/シアターガイド
サイト内検索
すべて|
公演名|
人名・劇団名|
劇場|
演劇ニュース
様々な条件で検索
こだわり検索
注目キーワード

特集ページ

シアターガイド×アーティスト シリーズ vol2

フランスに旅立った小野寺修二(おのでらん)がつづる

日々不条理日記

他人と話すの苦手、外国人苦手、海外不慣れな私が、9月から1年間フランスで暮らすことになりました。

案の定、お腹は下しまくり、周りは怖くて大きい人だらけです。

犬にも子どもにも馬鹿にされてます。

街では良い具合に聞き取れず、憶測の中生きてます。

ある意味静かです。妄想も進むってもんです。

日々不条理の中、観察日記つけてみました。

大まかに見繕って事実9割。

妄想が1割ほど混じってるかもしれません。

写真/7月某日...その2

何気なく街角のショウウィンドウを眺めていると、ガラス越しに人一倍頭の大きな男と目が合う。私が後退ると相手も後退る。よく見ると、不必要に髪の毛の伸びた私であることが分かる。床屋に行くことにする。

店に入ると店長らしき人物が小股で寄ってきて、本日の散髪担当者を指差す。彼女はまだ作業中で、目が合った私に軽く会釈をする。別の女が、私を奥の洗髪台へと連れて行く。その大柄な女は常に仏頂面で、店のシステムの分からない私に対して極めて不親切である。私は見よう見まねで、妙に高いその台によじ登り仰向けになる。

すると私が横になるや否や、女は何の断りもなくいきなり冷水を頭にかけてくる。最近暖かいとはいえ、突然のことにびっくり震え上がる。水圧としぶきがすごい。一通り頭に水をかけ終わった時点で、私の襟首はびしょびしょである。

女がシャンプーを両手に持ち、「どちらが良い?」と言う。天地逆でそのパッケージを見比べるが、何が何やら分からない。適当に片方を指す。女はそれを眺め、しばらく考えていたが、反対のシャンプーを使いだす。鼻歌を歌う女。なんとも納得出来ない状態のまま、また冷水をかけられる。

終わったらしい。自動で起き上がるシステムではなく、自分の腹筋で起き上がる。おざなりに頭にタオルがあてがわれたが、きちんと拭いてくれていないので、ぽたぽたとしずくが垂れ続ける。襟首よりさらに下まで濡れ鼠である。

女が私に何か言う。私はよく聞き取れず、無言で受け流す。するともう少し大きな声で言う。「マッサージしますか?」既に女の技量は見極めているので、きっぱりとNONと言う。急に女が笑い出す。周りの女たちがみな笑っている。場の空気として、私が何かを仕出かしたことが分かる。女を恨めしく思う。赤くなりながら散髪の場所に座る。

担当の彼女は待ちかねた様子だった。座るとすごい勢いでしゃべりかけてくる。適当に頷いていると、ものの3分もしないうちに切り終わる。女がにっこり笑う。鏡を覗くとなかなかの出来映えである。料金も良心的であった。私はびしょびしょになった襟元に沢山の髪の毛を付けたまま帰宅する。

それがほぼ一ヶ月前の出来事である。今、私はまたその店の前に立っている。店に入ると店長らしき男が小股で寄ってきて、本日の散髪担当者を紹介してくれる。奥から、はさみを持った前回の洗髪女がアーティスト然とした面持ちで駆け寄ってくる。

プロフィール

小野寺修二
(おのでら・しゅうじ)

小野寺修二プロフィール画像

北海道生まれ。学生時代から演劇活動を始める。

3年間の社会人生活を経た後、日本マイム研究所に入所。独自のマイムを目指して、95年に、同研究所で出会ったメンバーとともに「水と油」を結成。

メンバーそれぞれのキャラクターと、何気ないマイムのコンビネーションで断片的なシーンを重ね、ダンスのようなリ ズム感と喜劇のようなユーモアを合わせ持ったユニークな作風が、大きな反響を得る。創作過程では、主にシーンの物語部分を担当。

発表する新作が常に高い評価を得ていたが、06年3月に「水と油」の活動を休止。現在、文化庁の「新進芸術家海外留学制度」の支援を受け、フランス・パリで修行中。