「快快ヨーロッパツアー『My name is I LOVE YOU』」Love from the world ― - 特集ページ - 演劇ポータルサイト/シアターガイド
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シアターガイド×アーティスト シリーズ Vol.6

快快ヨーロッパツアー2009『My name is I LOVE YOU』

Love from the world

こんにちわー、快快っていうチームにいるしのだです!

取り急ぎ、今はヨーロッパにいますよー

夏はヨーロッパを転々と、フェスティバルを回ってツアーをしています

集団生活してると意外とテンションにばらつきあっておもしろいです

今の時点で山あり谷あり、まじリアルレポートお届けします、よろしくーーーー!!!

ヨーロッパツアー地図
写真/オランダ公演の様子

もい!!!なにやってたんだって感じで間隔あいてしまってもうしわけないです、快快のシノダですーー。そうこうしてるうちに、モイ!って挨拶がなにげにネット上で流行っているような気がします。一体ドコの誰が輸入したんか??

写真/オランダ公演を行った劇場

さてさて、快快のオランダレポに戻りますと、仕込みが終わって次の日、私たちは照明やら音響やらのテクニカルリハーサルを一日やってその次の日が本番初日なのだけれど、前回も書いたとおり、オランダ人はかっちり定時の6時であがるのを、ゲネプロ(本番と同じように最初から最後までやること)が終わらず、むちゃくちゃ渋られるのをなんとか交渉して7時半までのばしてもらうことに。オランダに来て悪ふざけモード全開になっている我々、ハンガリーでの反省もふまえて、ようやっと英語のせりふからの呪縛を振り切り、どーせなにいってんだか分かんないんだから、とことん意味分かんないことを日本語でいってやろう、と覚悟を決めて、なんでもいいから日本語を動きながら言って!とリクエストしたらこれが、、、奇跡の大爆笑を化学反応的に生み出した。

要は、やっとこの作品を自分たちのものにできたんだと思う。ものすごいヤーな顔をしていた音響のイゴールも、ゲネのオペレーション中に爆笑しまくっていて、たとえ言葉がわかんなくてもこっちがいい波動を出している時は見ている人に確実に伝わるんだなあー(泣)。

写真/スシパーティーの様子

実はその日、劇場とは違う会場で、フェスティバルのプログラムでもあるアルノーさんのテレビ番組に宣伝も兼ねて出演することになっていたんだけど、台風が接近してるってことで、フェス自体が中止になってしまったのです。そんなわけで、アルノーさんが快快のために用意してくれていたスシのケータリングが急遽、劇場にもちこまれて、ゲネが終わった後にみんなで事務所でスシパーティーをやったのだ!!! 久々に食べる生のマグロ&スシ飯に一同大喜び! がっつがっつ食べて、余ったお米やまぐろの固まりまでお持ち帰りさせてもらいやした。

ところが、いざ本番2日目、快快のパフォーマーのやし(中林舞)と梨乃(大道寺梨乃)の体調が急激に悪化。どうした、風邪でもひいたのか?と薬やら水やらを投入してみたものの効き目があるとは思えない。だけれど、昨日の奇跡のゲネを見ている私は、だーいじょーぶだろっとタカをくくっていた。

写真/オランダ公演の客席

事実、大丈夫だった。劇場は爆笑続きで終わった後にお客さんはみな、「まじで最高だったよboxxxx!!!」と声を掛けてくれ、ヨーロッパ中からフェスティバルに遊びに来た同い年ぐらいのやつらも劇中に出てくるローカルギャグを交えて大興奮で話しかけてくる。

だけれども、ほんとのほんと、やしと梨乃は明らかに体のキレが悪かった。それにつられて周りもすこしだけテンポが落ちてしまっていた。これはまじでやばいかもしれない、と、客出しが終わって楽屋に急ぐと、真っ赤な顔してダウンしている二人。これはまずいな、ってことで、明日の本番前に病院に行くことにしてとりあえず先に帰らせて、私たちは薬やら体温計やらを買ってホテルに戻った。それぞれの部屋でぜーぜーはーはーしている二人はもはや半分意識不明状態で寝込むばかりで、薬をのませて、明日になったらよくなってることを祈るしかできなかった。

写真/寝込むメンバー その1

次の日、朝一番でテツオが二人を病院に連れてってくれるためにホテルに迎えにきたのだけれど、その当時、新型インフルエンザの警戒のために、急な高熱を出した病人はかかりつけの病院以外入れない条例が出されたばかりで、最高で39度だしていた二人は、完全に門前払いをくらってしまったのです。何件か病院に電話をかけてもダメ、本番自体は夜の6時からだけれど、その前になんとか病院に行って症状が良くなる手当をしたい。テツオがフェスティバルのかかりつけの医者がいるかもしれない、と本部から派遣されているフランシスに連絡を取り、なんとかホテルにきてもらえないかと交渉した。

30分後くらいに、あわてた様子でフランシスはやってきて、「実は、劇場のインターンで入っていたスタッフが新型インフルエンザだったってことがわかったのよ、だから、あなたたちもみんなホテルからでないで!」と言うので、「え、それってうちらも?みんながみんな?」と聞くと、真顔でうなずく。

なんだかここまでくると笑えてきて、テツオは「じゃあ長くなりそうだし、ボクビール買ってくる」と言って近所のスーパーでハイネケンとニシンの刺身(?というか生のニシンを頭からがぶりと食べる、この地方の名産)をスポーツドリンクやお米なんかと一緒に買い込んできた。二人はとてもじゃないけど洋食を食べられる状態じゃないので、絹ちゃん(野上絹代)持参のトラベルクッカーでおかゆを炊いてなんとか食べてもらう。一口、二口食べてすぐに寝込む二人に、さらにフランシスが真面目な顔で、「朝はかった熱は脇ではかった? もしそうならそれは正確じゃないから、お尻ではかりなおしてってお医者さんに言われた」とまたそんなこと言う。お尻って、お尻?肛門ではかれってことおお!!! あーもーまじでうけるわっていうのはこっちが元気だったからなんだけど、一本の体温計を梨乃とやし、二人にどうやってつっこむかはちょっとだけまじめに考えたりして。やっぱり女の子がやったらいいよね、って梨乃には私たちがやったんだけど、やしは、なんかそういうところでストイックな部分があるから、もーろーとした顔をしながらも、いや自分でできるからって、自ら肛門に体温計ぶっさしてはかったら、現実に脇よりも高く、8度台まで下がったはずなのに未だに9度はある。わーお、、、と全然下がらない高熱にさすがにあせり始めた時、またもフランシスが追い打ちをかけてきた。

写真/寝込むメンバー その2

「このまま、二人がインフルエンザってことかもしれない状況で、今日の公演をするのは難しいかもしれない」。ようやっと、私たちにもことの重大さが実感として分かってきた。自慢じゃないが、快快は今までどんなに危機的な状況があったとしても(ex.劇場から出禁をくらってあと三日後に本番だってのに場所がなかったり)、公演中止というのは一回もなかった。もちろん風邪だろーが足にヒビいってよーが、なぜだか中止にするという選択肢は思い浮かばずに今までやってきた。けれども、今回は単独公演ではなく、フェスティバルに招聘されている立場だ。向こうが中止です、と決定したら、それは中止になるのだった。そしてその可能性も含めてフェスティバル側は検討しているらしい。フェスティバル付きのお医者さんは週末でものすごく急患が増えていて、とてもこのホテルに来れそうもないが、症状を聞いた限り、たとえ新型インフルエンザであってもちゃんと休んでいれば大事はないから、と結局ホテルに来ることはなかった。そして私たちはもはや買い物にも行ってはいけない、その場で待機して最終決定を待ってくれ、と言い渡された。

写真/他のメンバーがテラスで待つ様子

あーあ、これはもしかするともしかだぞ、と、テラスでぼーっとしてると、テツオがすでにハイネケンを二缶も空けている。これは一缶いっとこう、と開けるとオルガも、「私もノムネ」と開け始めた。もしも公演中止になった場合、例えばスカイプでこっから中継して、チケットは払い戻しになるにしても、なんかスペシャルエディション的にやったらおもしろいかもねー、とかって話していても、じりじりとただ待っていることには変わらない。いつの間にか時間は2時を周り、下手すると、もしも新型インフルエンザだった場合、オランダを明後日出発しなくちゃ行けないけれどそれも出来ずに、このまま五日間ぐらいホテルにカン詰になりっぱなしになるかもしれない、と最悪の展開になってきた。考えれば考えるほど、やーな気持ちになってくるし、対処しなくちゃいけないパターンがいくつも頭をよぎる。といっても、なぜかみな、一様に高揚はしていたのだけれども。追い込まれパワーで、むしろハイテンションになっていた。

3時をまわり、もう「やれ」って言われてもぎりぎりの時間になって、やっと本部からの連絡が届いた。「今回はとても残念だけれども今日の公演は中止にしよう」とのこと。「次にあるスロヴェニアのフェスティバルには、医者が病状確認したわけでもないし、インフルエンザの可能性はあるかもしれないが、自己責任で行ってもらう分には問題ない」。そういう決定になった。

写真/フェスティバルの様子

これは後になって思うことだけど、もしも公演が決定になったとしてもやしと梨乃はとても100パーセントじゃできなかったと思う。よくて50パー。だからそういう意味では、フェスティバルの決定は正しかったのだけれども、それでもやっぱり聞いたときは何かとてもむなしい気持ちになった。一同、「そっかあ、、、、」としばし落ち込む。病人二人にその旨を伝えると、へろへろの二人ですらあからさまに残念な顔をした、が、同時にほっとしたのも事実だと思う。そのまま眠り込む二人をホテルに残して、他のメンツで劇場に荷物を取りに向かった。

劇場の目の前のカフェで、テクニカルスタッフたちがコーヒーを飲んでいた。おーい、と手を振ると、走ってきて、「大丈夫なのかお前たちは、本当に残念だよ、てゆーか客席と舞台はなれてるからもしもインフルエンザだったとしてもその距離じゃうつんないって俺の親戚の医者がいってたぞ」、などと、口々に慰めなり憤りなりを言ってくる。そうなのだ、私たちだってやりたかった。この街でようやっと完成した作品だったからこそ、大好きになった街だからこそ、お客さんに伝わったって思えたからこそ、もう一度見せたかった。現に昨日の初日は評判になっていたらしく、劇場に当日券目当てのお客さんが何人もいた。直にごめんなさい、と謝らなくちゃいけないのは、ほんっとーーーにむなしい気持ちだった。

でも、何よりも一番辛かったのは、劇場に入ったら、すでに荷物が全部ばらされて片付けられていたこと。オランダ人てきぱきしてんな、ほんとに、と妙に感心したが、なによりもむなしさを通り越してくやしくなってしまった。
どーん、、、、
そんなオランダ編でした!!!!!!

次はスロヴェニア編。はたしてふたりは復活するのか、そして今度は上演できるのでしょーか?! でわでわ、se u!!!

(撮影=加藤和也)

プロフィール

篠田千明(しのだ・ちはる)
快快:
演出家・イベンター・シノダ

1982年東京都出身。週末はクラブか渋谷デニーズか新宿升やに出没。無料で新幹線に乗車出来る。ストリートに生きる術を網羅した生粋の東京キッズ。好物は雑炊。代表作には『小指値REMIX 霊感少女ヒドミ』(原作=岩井秀人、作=北川陽子)、『オールテクニカラー』、『R時のはなし』(作=北川陽子)。