特集:『友達』本番直前!稽古場レポート  - 特集ページ - 演劇ポータルサイト/シアターガイド
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タイトル画像:岡田利規×安部公房=ナンセンス・ギャグなのだ!? 『友達』本番直前!稽古場レポート

写真/『友達』の稽古風景その1

撮影=青木司

チェルフィッチュの岡田利規が手掛ける安部公房の不条理劇『友達』。その稽古場は今、驚くほど伸び伸びとして、笑いにあふれている。

岡田にとってはほぼ初めての演出だけの仕事、さらにバレエや舞踏、ミュージカルなどさまざまなバックグラウンドを持つ俳優たちが顔をそろえるという話題作。だが、それだけに滑り出しは、決してスムーズと呼べるものではなかった。7月上旬、本稽古に先立って行われたワークショップでは、岡田特有の演技メソッドとその語り口(戯曲と同じく極端に読点が少なく、「言い切る」ことがない)に惑乱され、頭と身体をうまく繋げないまま立ち止まる俳優たちも少なくなかった。また、その後の本稽古では、まず岡田自らが“チェルフィッチュ的演技メソッド”の封印を宣言したものの、しばらくはどこが目的地なのか、皆で手探りする状況が続いているように見えた。

ところが本番まで残り約10日に迫った今回、3週間ぶりに訪れた稽古場は見違えるほど、「動いて」いた。

物語は、一人の独身男のもとに、ある日突然見知らぬ家族がやってきて「助け合い」と称して居座ろうとするところから始まる。仮組のセットの上では、祖父(麿赤兒)・父(若松武史)・長男(今井朋彦)を中心とした「家族」が、主人公の男(小林十市)を実に楽しそうにいじめている。好き勝手に食べ物をあさり、うろうろと徘徊し、おかしな理屈を弄する……そこまでは確かに戯曲にも書いてある。だがまさか、逆立ちしたり、ゴロ寝したりしながらの演技は予想外。リラックスしたムードでダラダラ、生き生き、気ままに動く俳優たちの様子はまるで、ギャグマンガのよう。その様子を前にオロオロ、イライラする主人公の様子も実に滑稽だ。

写真/『友達』の稽古風景その2

撮影=青木司

演出席には、麿や若松らベテラン俳優の繰り出す珍妙な動きを、いかにも楽しそうに眺める岡田の姿がある。チェルフィッチュ的演技を封印したからといって、岡田の身体への視線、こだわりは変わらない。むしろここでは俳優たちそれぞれの身体的個性がより、引き出され、強調されているようだ。次男役の加藤啓が長男を張り倒すシーンでは、利き腕と逆方向へ動く不自然さを心配する加藤に対し、岡田はさらにおかしな動きを追加。「(リアルに)見えるとか見えないとかじゃなくて、面白いですもん」。こうして芝居はより、グルーヴを増していく。

『友達』はもともと、善意を標榜する集団(書かれた時代で考えるならたとえばアメリカ)が、個人の私生活を浸食するという、政治的なメッセージを持った作品だ。しかし、この稽古場を見る限り、岡田版『友達』はそれとは少し別の面白さ、視点を見つけ出したようだ。招かれざる客には相応しからぬ「家族」の自由な振る舞い、真面目な被害者であるはずの男のたまらない滑稽さ(これにはちょっとした仕掛けがあるのだが、それは観てのお楽しみ)……どちらが正しいとか、勝つとか、あるいは何が問題なのかではない、もっと複眼的な、文字通り不条理な『友達』。稽古に入ってすぐのころは「筏で漂流している気分」とコメントした出演者も。だが本番まであと数日に迫った今、岡田版『友達』は、確実に風を読み、帆をふくらませ、出発の時に備えている。

取材・文=鈴木理映子

【公演情報】

『友達』

2008.11/11(火)〜11/24(月・祝) シアタートラム

【スタッフ】 作=安部公房 演出=岡田利規 美術=堀尾幸男 照明=大野道乃 音響=市来邦比古 衣装=半田悦子
【キャスト】 小林十市/麿赤兒/若松武史/木野花/今井朋彦/剱持たまき/加藤啓/ともさと衣/柄本時生/呉キリコ/塩田倫/泉陽二/麻生絵里子/有山尚宏