東京芸術劇場「芸劇eyes」演出家インタヴュー -《其の弐》五反田団 前田司郎.1 - 特集ページ - 演劇ポータルサイト/シアターガイド
サイト内検索
すべて|
公演名|
人名・劇団名|
劇場|
演劇ニュース
様々な条件で検索
こだわり検索
注目キーワード

特集ページ

東京芸術劇場「芸劇eyes」演出家インタヴュー

野田秀樹芸術監督の下、09年夏より新体制でスタートした東京芸術劇場。同劇場が注目する若き才能たちを紹介するシリーズが「芸劇eyes」だ。ハイバイ(9・10月)、五反田団(10月)、グリング(12月)、冨士山アネット(2010年1月)、モダンスイマーズ(2月)と、飛ぶ鳥落とす勢いの小劇場5団体が小ホール1に連続して登場。そこでシアターガイド ホームページでは、気になる演出家たちの単独インタビューを短期連載する。

取材・文=熊井玲(シアターガイド)

《其の弐》五反田団 前田司郎

「芸劇eyes」2番手には、劇作・演出家としてはもちろん、小説家としても大活躍の前田司郎率いる五反田団が登場。現実とも虚構ともつかない不可思議な空間で、人々がなんてことない会話を繰り返しながら、すれ違ったり分かり合ったりしながら、ゆるゆると時を重ねていく――その滑稽さと愛おしさを細やかな演出で描き出す。今回は07年に初演され、08年に岸田國士戯曲賞を受賞した『生きてるものはいないのか』と新作『生きてるものか』を連続上演する。

◎まず、再演される『生きてるものはいないのか』について伺いたいのですが、執筆時はどんなことを考えていたんですか?

出演者がこれまでで一番多くて、18人なんです。それがまず、いつもとだいぶ違っていて。いつもと同じくらいの上演時間なのに、いつもの倍くらいの人数が出るので、例えばこれまでひとつのシーンに10分くらいかけてたのを、5分くらいにしないといけなくて。おかげで物語の展開が早くなり、すぐに書けちゃった記憶があります。あと、京都に滞在して書いていた*1ので、観光とかもしたいから早く書かなきゃって、それで早かったところもある(笑)。

◎出演者は意図的に増やしたんですか?

いえ、最初はそんなに採るつもりがなかったんですけど、ワークショップ・オーディションをやったらみんな面白くて選べなくなってしまって。

◎この作品で岸田國士戯曲賞を受賞されましたが、ご本人はどう受け止められましたか?

これで獲るだろうな、とは思ってました。すごくコンセプトが分かりやすい作品だし、それまでに何作か最終候補作まで残ってもいたので、流れ的にもそろそろじゃないかと。

◎受賞後、心境や環境に変化はありましたか?

心境はかなり楽になったというか、もうあんまり気にせずに書けるようになったんですけど、環境的には……あまり変わらないかな(笑)。

◎『生きてるものはいないのか』は、再演にあたって改訂されるのでしょうか。

キャストが変わったので一言二言直したくらいで、あとはほぼ変えてないです。

◎今回、キャスト・オーディションがありましたが、新しいメンバーになったことで作品に変化はありましたか?

それはすごくありますね。今回ほとんど初めての人ばかりで、30人中知ってる人が3人くらいなんです。やっぱり全然違いますね。お互いの好みを探るところから始めなきゃいけないので。

◎あえてこういった布陣にされたんですか?

あえてじゃなくて、たまたまです。でもせっかくだから、新しい人とやるのもいいかなと思って。俳優が違うとこんなにも違うのかというくらい、違いますね。例えば、前はすごく仲が悪く見えた2人が仲良く見えたり、役同士の関わり方や距離感がだいぶ違ってます。

あと、京都は2年越しで稽古したのですごく仲が良かったけど、今回はまだちょっと俳優同士が気を遣っていたりして、それがなくなれば京都のようになるのかもしれないし、あるいは東京は東京で別の進化をするのかもしれないし。まだ分かりません。

◎同時上演される『生きてるものか』は、チラシに「『生きてるものはいないのか』の陰画みたいな感じになる」と書かれてありますね。

もともと『生きてるものはいないのか』を書いている時に、「みんな死んじゃう設定は一緒で、でもいろんなバージョンを作りたい」と思っていたんです。例えば登場人物を全員外国人にするとか、おじいさんとおばあさんだけにするとか、場所の設定も、東京のど真ん中とか過疎の村とか、いろんなバージョンにしてみたいと思って。でも結局、『生きてるものか』はそうではなくて、『生きてるものはいないのか』のネガという感じになりました。バージョン違いっていうよりは、対になった別物っていうか。

◎台本を読ませていただいたんですが、これは……物語が逆走しているという解釈でよいですか?

そうですそうです。『生きてるものはいないのか』は日常から始まって、ある事件が起きて、人がどんどん死んでいく、でもそれがあまりに続いて「死」がもう事件ではなく現象になってしまって終わる、という作品だったんですけど、『生きてるものか』はその逆です。

◎前田作品には以前から死に対する目線を強く感じますが、この2作品をはじめ、先ごろ「新潮」(09年10月号)に発表された小説「逆に14歳」(友人の死をきっかけに再会した老人二人の珍妙なやりとりを描く)では、「死」がより明確なテーマとして表れていますね。

死についての考えは深くなったり浅くなったり、それに対する態度もどんどん変わってはいますが、一貫して死について書いている気はしているんです。でも確かに、『生きてるものはいないのか』みたいに舞台上で人が死ぬってことはこれまでなかったですね。

ただ、ダイレクトに死を描くことで、僕としては逆にぼやかした印象なんです。舞台上で人が死ぬといっても、死んだフリした人たちが横になってるわけで、それはある種おふざけにもなるようにしてあるというか。そういう意味では、むしろ死をダイレクトには描いてないのかもしれません。

*1 京都芸術センターの演出家発掘・育成プロジェクト「演劇計画」の一環で、オーディションで選抜された京都の俳優17人と前田が、2年かけて作品づくりを行なった。07年に京都と東京、二都市で上演。


プロフィール

前田司郎(まえだ・しろう)
作家、劇作・演出家、俳優。77年東京都五反田出身。97年、五反田団を旗揚げ。05年に小説家デビュー。今年5月に、初の海外公演としてベルギーにて『すてるたび』を上演した。

公演情報