柿喰う客「中屋敷法仁 インタビュー」  - 特集ページ - 演劇ポータルサイト/シアターガイド
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王子小劇場 佐藤佐吉演劇祭2008「シアターガイド賞」受賞記念/柿食う客 代表(作・演出) 中屋敷法仁 インタビュー

約3カ月に渡った、王子小劇場主催の「佐藤佐吉演劇祭」で参加7劇団の先陣を切りながら、シアターガイド賞をもぎ取った柿喰う客。自らの作風を「うすら寒い」と評する主宰・中屋敷法仁の舞台は、あり余るほどの躍動感で観客を圧倒しながら、物語をいとも簡単にひっくり返し、観客を煙に巻く。底が知れないのか、底がないのか。
「底を見ない」――それが彼の答えだ。
取材・文=小林靖弘(シアターガイド)

変わらぬ根っこは「やってる!」感

舞台写真/『俺を縛れ!』(08年6月/王子小劇場)

▲『俺を縛れ!』(08年6月/王子小劇場)
幕府が命じた「キャラ(人格)」に翻弄される武家の騒乱を描いた時代劇。「キャラ解放」後の自由と平和に、「思考停止の危うさ」をにじませる終幕がドライな後味を残した。佐藤佐吉演劇祭2008「シアターガイド賞」「こりっち賞」受賞作。(撮影=渡辺佳代)

―演劇を観始めたのはいつごろなんですか?

僕、地元が青森なんですけど、小学校のころから、文学座とか東京ヴォードヴィルショー、こまつ座とか二兎社を観てるんですよ。もともと親が芝居好きで、演劇鑑賞会で二カ月に1回くらい東京から招聘されてくるのを僕に見せてたんですね。一番最初に観たのが無名塾の仲代達矢主演『リチャード三世』。まだ低学年で、内容もまったく頭に入ってこなかったけど、もう熱狂してましたね。

―演劇を実際にやり始めたのは、いつから?

中学生で始めてました。文化祭に芝居で参加しよう、というノリで。僕が作・演出・主演。一番やりたがりなので。

―やはり小学校のころに観ていたような芝居の影響を受けて?

それが僕、芝居を書こうとした時に、「シナリオの書き方」的な本を片っ端から読み漁ったんですよ。もちろん戯曲も。本を読んで勉強したんですね。すごく優秀なシチュエーションコメディーを書こうとして、本で吸収した知識だけで「書けた!」なんて喜んでた(笑)。僕、本当に演劇オタクなので、影響ってことで言えば、野田秀樹さん風でもあり、松尾スズキさん風でもあり、KERAさん風でもあり、アングラ風でもあり……おいしいものを無理矢理くっつけてるんだと思うんです。最初から、自分の方法論がないところが、方法論になってたかな。

―高校生の時に書いた脚本が賞をもらってますね。

はい。僕が高校3年生の時に書いた『贋作マクベス』が、翌年の2003年に全国大会まで進んで、その時の審査員だった平田オリザさんから最優秀創作脚本賞をもらったんです。普通、高校演劇っていうのは、高校生の等身大の姿を描くものなんですね。進路の問題とか、将来の不安とか、いじめの話とか。そういうものが等身大とされてきたんですが、僕はそんなことより、ただひたすら『マクベス』がやりかったんですよ。それこそが僕の等身大だ!と。高校3年生でもう引退するから好きにやらせてくれ、『マクベス』のせりふを言わせてくれ、っていう姿を描いたのが『贋作マクベス』。僕の自伝的作品です。実際に僕が主演で。

―平田さんはどんな評価をされたんですか?

「中屋敷君は、調子に乗ってる感じがいいね」と言われました(笑)。上から目線というか俯瞰してるからでしょうね。僕は芝居を作るのに自分自身を掘り下げたり、ギリギリの状況に飛び込んだりするタイプではなく、自分も含めて徹底して俯瞰するんです。本気だったら『マクベス』自体をやるべきところを、「やべぇ、俺たち『マクベス』やってる! 超かっけぇよ!」って浮ついてる高校生を演じて、お客さんに見せちゃう。その「やってる!」感というのは、今でも柿喰う客の根幹になってますね。「あぁ、時代劇やってる!」とか(笑)。

こんにちは、私たちが柿喰う客でございます

画像/柿喰う客のマスコット・キャラクター「柿生めこ」

▲柿喰う客のマスコットキャラクター「柿生めこ」(12)
柿喰う客の公演チラシでも、季節や作品内容に合せて、さまざまな装いを見せてくれる。(デザイン=山下浩介)

―大学の演劇研究会に入って、04年に柿喰う客の活動を始めたころには、現在のように早口言葉のごとくたたみかけるせりふや、細かく面(ツラ)を切ったりポーズをつけて演じるスタイルは、確立していたんですか?

ほぼできてましたね。だから、どこかの劇団に入って座付きの作・演出家になるというつもりはなかったんです。仮にそうしたとしても、作品の責任は取れますが、僕の作風が分かってる人じゃないと、宣伝や上演計画などの公演の責任が持てないですから。曖昧にされることが多いけど、作品の責任と公演の責任は別もの。僕を売ってくれるプロデューサーがいないとダメだな、と考えて、じゃあ、自分がいいや、と思ったわけです。マスコットキャラクター(画像)を考えたのも、商品として柿喰う客の責任を負いたかったから。そこは、ラーメン屋と一緒ですよ。「さあ、お客さん、こんにちは、私たちが柿喰う客でございます」と、しっかり自分たちの顔を提示しないと、おいしいと評価される対象にも、まずいと批判される対象にもならない。ラーメン屋にだって「○○くん」みたいなキャラクターいるじゃないですか(笑)。

―もうひとつの「作品の責任を取る」というのは具体的にはどういうことですか?

「つまんない」って言われた時にちゃんと謝れる芝居をする、ということですね。何が悪かったのかを反省できるように作る。僕、ダメ出しで一番嫌いなのが「伝わってこない」という言い方なんです。僕らが稽古場で作るものは「伝わる芝居」じゃなくて「伝える芝居」。声の大きさとか、アクティングの選択とか、そういう材料として反省できるものをちゃんと積み上げて作りたいんです。だから、俳優には芝居前のコンセントレーション(集中力を高めること)もさせない。俳優が個人の魂とか情念に向かっちゃったら、冷静な議論ができなくなりますから。僕ら、稽古では途中で止まってもすぐに笑って世間話をできる状態にしてます。