柿喰う客「中屋敷法仁 インタビュー」  - 特集ページ - 演劇ポータルサイト/シアターガイド
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王子小劇場 佐藤佐吉演劇祭2008「シアターガイド賞」受賞記念/柿食う客 代表(作・演出) 中屋敷法仁 インタビュー

約3カ月に渡った、王子小劇場主催の「佐藤佐吉演劇祭」で参加7劇団の先陣を切りながら、シアターガイド賞をもぎ取った柿喰う客。自らの作風を「うすら寒い」と評する主宰・中屋敷法仁の舞台は、あり余るほどの躍動感で観客を圧倒しながら、物語をいとも簡単にひっくり返し、観客を煙に巻く。底が知れないのか、底がないのか。
「底を見ない」――それが彼の答えだ。
取材・文=小林靖弘(シアターガイド)

徹底した我田引水の方法論

舞台写真/『真説・多い日も安心』(08年8月/吉祥寺シアター)

▲『真説・多い日も安心』(08年8月/吉祥寺シアター)
05年初演作『多い日も安心』を改訂して上演。巨大独占企業と化したアダルトビデオ・メーカーが権力を握り、AV女優が皇帝として君臨するようになった国家の崩壊を描く。(撮影=内堀義之)

―王子小劇場の「佐藤佐吉演劇祭」でシアターガイド賞を受賞した『俺を縛れ!』も、前作『真説・多い日も安心』も、演技スタイルもさることながら、荒唐無稽な設定から現実とリンクするテーマへの跳躍がユニークでした。ひたすらくだらないことで争っていながら、世相を斬る鋭いせりふが不意に現れたりして。

危険なテーマと、くだらないネタを混ぜちゃうのは、自分でも特殊だなと思います。世の中でヤバいぞと思われている大問題も、どうでもいいくだらない話題も、僕の中でいったん全部同じレベルにしちゃって、どんと出す。観る人の中には、アブない言葉、エロい言葉の方に敏感に反応する人もいるかもしれないど、僕の中では政治問題もAVも同じレベル。『真説〜』は国家の話だから、壮大なナショナリズムの話として観る人もいるし、単にギャグだと思って観る人もいる。作品の振れ幅が大きいのは、僕自身が、吸収する情報を限定してないし、序列をつけないからでしょう。僕、なんでも知りたい方なので、知らない名前を聞くと、何者だか調べないと気がすまないんです。Yahoo!のアクセスランキングで上位の単語とか、分からないとイラッっとするんですよね(笑)。

―柿喰う客は、過去3年間、毎年4本以上の作品を上演しています。今年は初のフランス公演(『恋人としては無理』)を行い、次回公演の一人芝居2本を含めれば計6作、さらに外部への書き下ろしも手がけています。かなりハイペースじゃないですか?

それは、僕自身の才能を見極めたいなぁと思って、どんどん作ってるんです。僕が考えた「才能枯渇論」というのがあって。才能は限られている、ということを前提にしている考え方なんですが。人生に10本しか作品を書けない劇作家がいたとして、劇団が年1本ペースで公演を打ってたら、10年ダラダラと劇団をやっちゃう。でも、年5本のペースでやれば、その人は2年で潰れて、自分の才能の限界に気づけるんですよ。だから、潰れるなら早く潰れないかなぁ、と思ってやってるんですけど(笑)、どうも僕、潰れないっぽいんです。

舞台写真/中屋敷法仁(『真説・多い日も安心』より)

▲中屋敷法仁(『真説・多い日も安心』より)
狂言回しを担う、キープレイヤーとしても活躍。劇作スタイルも「一人でしゃべりながら書く」という。(撮影=内堀義之)

―おぉ、すごい自信ですね。

いや、最近、僕自身の“井戸”を掘ってないんだ、と気づきまして。それは枯渇するわけない、と思い至ったんです。人の“井戸の水”、知識や情報を加工して売ってるんで。水泥棒なんですよ(笑)。僕は子どものころから、情報は仕入れて発信するものだ、という思いを強く持っていて。書き方にしても、例えば、物語が30パーセントまで進んだら、全登場人物を出さなきゃダメだよな、とか、どんでん返しは80パーセントまで進んでから仕掛けよう、とか、本で吸収したことを馬鹿正直に実践してます。それをやるから作品がつまらなくなる、とは誰も言っていないので、まず乗っかって、そのうえで真剣にシビアに勝負しようと。最初から自分の“井戸”を掘って、自分にしかできない演劇を作ろうとしている人たちと比べて、決して楽をしようと思ってるわけじゃないんです。そこは声を大にして言いたい。

―前作は、40人以上のキャストが出演する作品でしたが、新作は一転、一人芝居の二本立てですね。

自分にカセをはめないと、新しいことをしたがらないので。既成の台本をやろうとか、ダブルキャストにしようとか、フランスに行こうとか、がんばって作品の枠組み自体を変えています。個人的にうれしいのは、10月にジェット・ラグ プロデュースで、牧田(明宏)さんが書いた『あなたと私のやわらかな棘』を演出したし、来年も劇団外での演出が何作かありそうなんです。そういう活動を通して、もっと変なことを見つけていけるかな、と楽しみにしてるところです。

【公演情報】

《王子リバーシブル#02》
柿喰う客企画公演
七味まゆ味 一人芝居『いきなりベッドシーン』
玉置玲央 一人芝居『いまさらキスシーン』

【スタッフ】 作・演出=中屋敷法仁
【キャスト】 「いきなりベッドシーン」七味まゆ味/「いまさらキスシーン」玉置玲央

*上演時間=「〜ベッドシーン」1時間/「〜キスシーン」30分

2008.11/19(水)〜24(月・祝) 王子小劇場
・料金=「〜ベッドシーン」全席自由2,000円/当日2,300円(19日は各500円引)/「〜キスシーン」全席自由500円
・開演時間=「〜ベッドシーン」平日19:30、土・日曜・祝日14:00と19:00/「〜キスシーン」平日21:00、土・日曜・祝日15:30と20:30

[大阪公演]

in→dependent theater PRODUCE#12「INDEPNDENT:08」参加
玉置玲央 一人芝居『いまさらキスシーン』

2008.11/27(木)〜30(日) インディペンデントシアター2nd
・料金=全席自由2,500円/当日2,800円

七味まゆ味 一人芝居『いきなりベッドシーン』

2008.12/1(月) インディペンデントシアター1st
・料金=全席自由1,000円

・お問い合わせ=劇団 TEL.080-6801-7389/info@kaki-kuu-kyaku.com

中屋敷法仁 プロフィール

劇作・演出家・俳優。1984年青森県生まれ。青森県立三本木高校在学中に発表した『贋作マクベス』で、第49回全国高等学校演劇大会・最優秀創作脚本賞を受賞。青山大学演劇研究会所属中の、04年に柿喰う客の活動を開始し、以降、全作品の作・演出を手がける。06年、劇団化に伴い、代表就任。08年は柿喰う客『サバンナの掟』、『恋人としては無理』フランス公演&凱旋公演、『俺を縛れ!』、『真説・多い日も安心』を上演。劇団外でも、ジェット・ラグ プロデュース『あなたと私のやわらかな棘』で演出を担当。明日図鑑・牧田明宏の脚本に描かれた複雑な人間模様を、役者のコミカルな動きと配置で視覚化し、新境地を見せた。09年には、3月に『恋人としては無理』で柿喰う客初の国内ツアー公演を行うほか、4月から5月にかけて、同世代の劇作・演出家と企画した連続公演「キレなかった14才りたーんず」(こばまアゴラ劇場)も控えている。シアターガイド本誌でも「わたしの今月」を連載中。