特集:「キレなかった14才りたーんず」  - 特集ページ - 演劇ポータルサイト/シアターガイド
サイト内検索
すべて|
公演名|
人名・劇団名|
劇場|
演劇ニュース
様々な条件で検索
こだわり検索
注目キーワード

特集ページ

6人の演出家による連続上演「キレなかった14才りたーんず」特集 日程:2009年4月16日(木)〜5月6日(水・祝) 会場:こまばアゴラ劇場

vol.02 オーディションレポート

「キレなかった14才りたーんず」の目玉のひとつが、全6作品フルキャスト・オーディションだ。参加資格は、演劇経験者であるということのみ。告知範囲が限られていたにもかかわらず、11月中旬の締切には、計175名からの応募があった。そのうち、書類審査を通過した120名を対象に、12月上旬に実技審査が行われた。各回20名のオーディションを3日間で計6回。演出家たちは1日に40名の応募者たちと会うことになる。ちなみに応募者は、どの演出家の作品に出演することになるかは分からない。演出家たちも、杉原以外は全員新作なので、キャスト次第で作品そのものが変わる可能性があるという。だからこのオーディションは、応募者だけでなく演出家たちにとっても、貴重な出会いの場なのである。

取材・文=熊井玲(シアターガイド)

写真/オーディションの様子 その1

オーディション1日目。初回開始の1時間前に会場のSTスポットを訪れると、演出家6人は円になって、進行の最終確認を行っていた。30分前に楽屋に戻り、立ったままお昼御飯を頬張りながら、6人は慌ただしく役者のリストに目を走らせる。そして開始時間が迫るにつれ、それぞれに落ち着きがなくなり始めた。自分が言うべきことを黙々と書き出す者、緊張でお腹が痛くなる者、やたらと口数が多くなる者などなど。ドア一枚隔てた隣の部屋で、役者たち同様、演出家たちもまた緊張し、そわそわしている。その様子がなんだか微笑ましかった。

午後1時。第1回目のオーディションがスタートした。

写真/オーディションの様子 その2

第1プログラムは神里による<空気椅子>だ。<空気椅子>という言葉を聞いた瞬間、役者たちの間にふっと小さな笑いが起こった。姿勢の取り方を神里が説明し、全員が体勢を整えたところで音楽スタート。曲はMr.Childrenの「イノセント・ワールド」。全員で合唱し気を紛らわせているせいか、1分経過しても脱落者はゼロ。その後、2分あたりで腰をつく人がぱらぱらと出始め、膝ががくがく笑い始めたり、奇声を上げる人も。4分を過ぎたところで最後の一人が終了すると、誰からともなく拍手が起こり、会場の空気が和やかになった。最初のプログラムは、まず成功のようだ。

第2プログラムは柴による<指令>。演出家からのメッセージが書かれた紙を無作為に配り、そこに書かれた<指令>通りの内容を、6人1組でやってもらうというもの。紙を開いた瞬間に吹き出す人、渋い顔になる人、頭を抱える人など、反応がさまざまで面白い。ちなみに<指令>の内容は前もって公表されず、読んだ本人しか分からないので、実際にどんな動きが出てくるかは役者次第になる。

写真/オーディションの様子 その3

1組目が始まると、いきなり大爆笑が起こった。やたらとぐるぐる走り続ける人がいるかと思えば、「ハッピーバースデイ」を歌い続ける人、なぜか写メを撮ろうとする人もいて……なんなんだ?これは。演出家たちも大爆笑で見ていたが、最後に役者自身から<指令>の内容と、それを書いた演出家の名前が発表されると、「ほー」とか「なるほど」とつぶやいたり、「そうなるのー?」と突っ込んでみたり。

ちなみに<指令>の中身は、例えば「新しい言語でコミュニケーションしてください」(篠田)、「あなたの全主導権を握るのは尻だ」(白神)、「他の人よりも幸せになれ」(中屋敷)、「本当に寝てください」(神里)、「とにかくゆっくり動いてください」(杉原)、「全体の交通整理をしてください」(柴)などなど何種類かあり、例え同じ<指令>でも、解釈によって出てくる表現がまったく違う。演出家たちは手元のボードで役者の名前を確認し、時折、演出家同士で何かささやきながらメモをとっていた。

第3プログラムは杉原による<ベンチ・インプロ>。2人1組になってベンチに腰掛け、言葉やジェスチャーを一切使わずに、ちょっとした仕草や目線などによって即興でコミュニケーションを行う。始めの2分は役者たちによるフリー演技、そのあと3分間に演出家6人の指示がどんどん加えられる。ベンチは「く」の字型に2つ用意され、A、B二つのベンチで同時に演技が展開された。

大体どの組も、まず一人がおずおずと現れてベンチに座り、遅れてもう一人が登場して、二人が目を合わせたり反らせたりするうちになんとなくコミュニケーションを始める……という展開なのだが、ちょうどその辺りで2分になるので、そこから演出家たちの指示がどんどん飛び始める。

「5千円のチケット料金が取れる演技で!」(中屋敷)、「●番の方、そこで液体になってください」(神里)、「そのまま天地を逆転させてください」(篠田)などなど。一人の演出家から出た指示に役者が反応すると、それを見た別の演出家が、また別の指示を出す。いつの間にか演出家たちも前のめりになって、お互いの出す指示と役者たちの反応とを、時に大爆笑しながら楽しんでいた。面白いのは、6人それぞれからかなりたくさんの指示が出ているのに、場の混乱がまったく起きなかったこと。演出家たちの無理難題ともいえる指示に素早く応えるさまを見て、「役者って器用だなあ」と素直に関心。最後は会場中の熱が高まりすぎて、ただ観ているだけの私も軽い疲労感を感じるほどだった。