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6人の演出家による連続上演「キレなかった14才りたーんず」特集 日程:2009年4月16日(木)〜5月6日(水・祝) 会場:こまばアゴラ劇場

vol.02 オーディションレポート

写真/オーディションの様子 その6

その3日後、さらに“追加審査”が行われた。今回のオーディションで演出家たちが「もうちょっと話してみたい」と思った役者たちに再度集まってもらい、各演出家のテキストなりメソッドなりを使ってさらに深いアプローチをしてみる、という審査だ。

例えば柴は、人形を使ったコミュニケーションや、話し手と聞き手の身体はそのままに会話の内容だけを入れ替えるワークショップ(以下WS)。篠田は、ある設定を与えて、その時の感情と状況説明とを身体と単語でつづっていくWS。金属なら硬質感を、濡れタオルなら湿り気と柔らかさをというように、言葉の抑揚や声の張りなどでものの状態や場の状況を表現しつつ、さらにそこに感情も乗せていくという難易度の高い内容だった。中屋敷は身体に対する意識を0から100%へ、100%から0へと瞬間的にスイッチングする動きや、長ぜりふを感情表現を交えずに早口で言い切るWS。神里は、自身の『リズム三兄妹』のテキストを使って、実際の稽古のように演出をつけていった。白神は“自分が、どこからの命令によって歩かされているか”を意識させ、その中心点をずらしていくことで身体そのものを意識させる動きのWS。杉原は、ゆっくり歩いて振り返るという動きや、今回上演する『14歳の国』(作=宮沢章夫)の台本を使ったWS……というように、各演出家が自身のフィールドに近い内容のWSを行い、休憩時間にはざっくばらんな雑談も交わしながら役者たちとの距離を縮めた。

6人の現場に立ち会ってちょっと面白かったのは、WSの内容は言うまでもないが、「演技スタート」の合図が6人それぞれ違っていたことだ。神里は「よーいドン」、中屋敷は「はい!」か「どうぞ!」、篠田は「お願いします」か「はいどうぞ!」、杉原は手を叩くと同時に「はい!」、柴と白神は特別合図をしなかった。もちろん毎回同じ合図というわけではないのだが、6人の演出家の現場を一度に観る機会は今後もあまりないだろうから、普段あまり気付かない、そんな違いが際立って感じられた。

朝までキャスティング会議

さて、5日間にわたる審査を全て終えた演出家たちは、場所をアゴラ劇場稽古場に移し、その日のうちにキャスティング会議を行うことにした。横浜から渋谷まで電車で約30分。その間、ヘッドホンをして何やら紙に書き付けている柴、スタッフと雑談する中屋敷、隣同士に座って時々相談しながら候補者リストを見ている杉原と白神、みんなと離れた席で一人リストを見ている神里、ヘッドホンをしたまま眠ってしまった篠田。

アゴラ劇場稽古場に着き、会議が始まったのはちょうど深夜0時だった。オーディションの間もキャスティングについて多少の相談をし合ってはいたものの、「本命」が発表されるのはこれが初めて。まずは6人一斉に希望のキャストを披露し、同時に作品の構想や演出プラン、なぜそのキャストが必要かといったプレゼンを行うことになった。「いっせーのーせ!」で披露した希望キャスト表には、ぱっと観ただけで数名、同じ名前があった。さあ、ここからどうやって決めていくか。

普段は大概話し合いで解決し、さほど衝突することがない6人だが、キャスティングに関することとなると非常に頑固だった。なかなか譲らないし、そのために多少口論になっても、互いに全く辞さない。これは長くかかりそうだぞ、と腹を決めて、私も脚を崩し、のんびり決定を待つことにした。

キャスティングは、誰か一人を変えると全体のバランスそのものに影響が出てしまうため、希望キャストのかぶりを解消するには、何パターンものキャスティング案を考えなくてはならない。演出家たちは何度も役者のリストを見つめ直し、何度もキャストのパターンを考え、他の演出家たちと相談し……を繰り返すこと2時間。まず篠田組のキャストが決定した。会議が始まってから咳が悪化し、明らかに体調不良の様子を見せていた篠田は、そのまま部屋の片隅で仮眠。そのあと、また長い長い話し合いと熟考の時間を経て、ぽつぽつとキャストが決まり始め……。結局6人全員のキャストが決まったのは朝の4時55分だった。

全員が明らかに疲労していて、眠たそう。しかし、ある種の興奮状態に包まれていた6人は、そのまま制作チームの会議に合流して徹夜で会議を続け、結局、朝9時に解散となった。

外に出ると、空は薄い水色に明るく晴れ渡り、風は刺すように冷たい。眠さと疲労とで身体は重いが、五感に染み渡るような冬の朝の空気が、今の気分にぴったりだと感じた。

ちなみに、徹夜会議で体調を悪化させた篠田を筆頭に、その場にいたほぼ全員がそのあと風邪を引いた。かく言う私も熱とノドの痛みに悩まされ、数年ぶりに病院へ行ったのだった。

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