プロレスラー・マッスル主宰「マッスル坂井 インタビュー」  - 特集ページ - 演劇ポータルサイト/シアターガイド
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プロレスラー・マッスル主催 マッスル坂井 インタビュー

演劇人はプロレスが好き。よく聞く話です。でも演劇のお客さんはどうなんだろう。相手の技を受けることから始まるプロレスは、技と魂のコミュニケーション。技と魂のやりとりを繰り返し、高揚し、観客を引き込んでいくわけです。そこには感情が見えるし、それぞれの考え方も伝わってくる。これって実は演劇にすごく近いでしょ? だから演劇人はプロレスが好き。だったら演劇ファンだってプロレスが好きになれるでしょ? なれ!(笑)。しかも昨今は、演劇的な“設定”を持ち込み、笑いを盛り込んだ内容にシフトしたエンターテインメント型のプロレスも多く出て来ています。その代表格が、「マッスル」なのです。
(取材・文=今井浩一)

マッスルはプロレスです。

写真/マッスル坂井

私はあえて“プロレスラーによるリング上での演劇”と「マッスル」を紹介してきたが、それは演劇ファンにこそ観てほしいからのこと。ただ、その面ばかりがクローズアップされているのは申し訳ない。でも、あくまでも彼らの思いは、プロレスに新しい観客を導く導線となることなのだ。

プロレスはよく痛いから嫌だという女子がいるが、「マッスル」では試合らしい試合はほぼ1試合しかない。だから観に見に行こう。ただ面白おかしい展開の中で繰り出されるその一試合がインパクトを呼び、忘れたころにその日の設定と結びつく。アントーニオ本多はプロレス界に自分を導いてくれたディック東郷と闘った。レスラーではないが鶴見亜門は自分の結婚式の翌日に心意気を示すためにスローモーションだったがAKIRAから勝利した。マッスル坂井も時の三冠王者・鈴木みのると闘った。彼は相手につき合うことなく、自分のスタイルを押し通すことで有名。「マッスル」の中でも同様だった。「プロレスをなめるんじゃねえ」と鈴木が叫んだ時は「マッスル」も壊れるかと思ったが、くだんのフィギュアの採点ブースに坂井を呼び寄せて採点を受けるというオチを見せてくれた。その日の坂井からのメールは一言、「こわかった!」だった。

いずれにしても、このたった一試合が初めて観戦した観客にもインパクトを植え付けること請け合いだ。

マッスル坂井

僕はプロレスというのはスポーツのドラマティックな、感動する部分を極端に肥大化させたもので、ものすごくサイコロジカルだと思っているんです。一流のレスラーの試合というのは、観客の心を手に取るようにつかんで試合を組み立てていますから。それができないから、せりふや映像を使っているわけで。僕がプロレスにこだわっている以上、同じことでは一流レスラーを超えられませんからね。当初はいろんな方面からお叱りは受けましたけど(苦笑)。

ただ今年の前半で「マッスル」の初期衝動の時期がおわりました。と同時に仕事としてなんとか目鼻がつきそうだなって感じです。でもと同時に、アイデアが枯渇してしまいました(笑)。人気が出て来てプレッシャーもありますけど、結局はその時その時に自分の中にあるものをやってるだけなんです。やりたいことなんですよ。

プロレスではありえない同じ内容を見せる

次回大会は9月5日〜7日、下北沢の北沢タウンホールで行う「マッスル15」。前売券は発売と同時に完売する人気ぶりだ。その内容は「プロレスとインプロ、シアタースポーツの融合の予定」と坂井は言う。その通りになるかどうかは本番を観てね。

これまで「マッスル」はプロレス界の最大の常識?である、同じ“作品”を二日続けても上演してきた。や、演劇だったら1週間公演で同じことを見せるのは当たり前のこと。でもプロレスでは同じ内容の試合はやりようもない。某「紙のプロレス」誌では、二日間の興行の同じシーンを比較するように並べて特集したほどだ。それが今回は3日間続くというから面白い。

マッスル坂井

未来は全く見えないですね。開拓者は開拓するものがあるじゃないですか。ビジョンがあるでしょ。僕らの場合は適当に掘っている感じです。金かダイヤか、なにかしら出てきたらいいなあって気持ちでやってますね。今のところ、ちょこちょこ何か出て来てますけどね。労働の対価ぐらいのものですが(笑)

といいつつ、目指すは格闘技の殿堂、日本武道館。すでに何度も口にしているから本気も本気。今、プロレス界でこの会場で興行が行えるのは一つぐらいしかない。さらに、10月にはまだ書けないが、プロレス界がうらやむようなビッグサプライズもあるとか(ちょっと大げさかな)。それは恐らく「マッスル15」で発表されるだろう。合い言葉は「水曜どうでしょう」に迫れるか?

マッスル坂井

一歩一歩やっていくだけですね。ま、こけるほど突っ走ってるわけでもないので。そうそうこの間、渓流釣りにいったんです、撮影もかねて。管理釣り場にいくと、お金を払うとしれっと魚を放流してくれるんですよ。だけどそこが休みで、その先の渓流で真剣勝負したんです。針の付け方さえもわからない僕なんですけど、大きなヤマメが二匹も釣れて。そういう思いがけない感動をお客さんに与えていかないといけないかなって思うんですよ。

でもずっと実験ばかりやっているので受け入れられるかはヒヤヒヤなんです。笑いを入れることで、受け入れてもらえたかどうか確認できるんですよ。仮装大賞をプロレスと言ってやったり、笑点をプロレスと言ってやったりしてますけど、プロレスだって言い切れるのは、プロレスラーが与えられた困難な状況をどうプロレスラーとしてプロレス的に乗り越えるかを見せているから。それが結果的にプロレスらしいプロレスになるかどうかの違いです。どうなるか観客をドキドキさせるのがエンターテインメントの基本じゃないですか。僕らがいろいろやっていく中で、政治も、経済も、宗教も、歴史も、テレビも、もちろん演劇もふくめてとにかく世界はプロレスでできていると証明できたら面白いですね。だれかに演出されているわけですから。

「マッスル」。今乗っておいても決して遅くはない。その人気は世間にもきっと届くはずだ。

【公演情報】

『マッスル15』

2007.9/5(水)〜7(金) 北沢タウンホール

・スーパーシート(最前列のみ)5,000円/自由席(二列目以降)4,000円

マッスル坂井 プロフィール

本名:坂井良宏、77年新潟生まれ。DDTプロレスリング所属のプロレスラー、マッスルの主宰。身長186cm、体重120kg。新潟県新潟市出身。早稲田大学在学中の02年に、DDTにダークマッチで初出場、正式デビューしないまま練習生として200試合以上をこなす。04年7月31日後楽園ホール大会でスーパー宇宙パワー相手に正式デビュー。04年10月に「マッスル」をスタートさせる。DDTや「マッスル」で使用する映像を手がける「DDTテック」の社長でもある。