「大山峻護 インタビュー」  - 特集ページ - 演劇ポータルサイト/シアターガイド
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大山峻護 Shungo Ohyamaインタビュー

パルコ劇場で上演され、その後全国を巡演している、美輪明宏主演『双頭の鷲』。この公演で、前田日明がスーパーバイザーを務める「HERO'S」で活躍している格闘家・大山峻護が初舞台を踏んだ。オーストリー・ハプスブルグ家最後の王妃エリザベートの数奇なる実話を元に、コクトーが独創的に探求した傑作。王妃失脚暗殺を企む皇太后一派の陰謀、皇太后の情夫である警視総監フォエーン伯爵と王妃に純愛をささげる反政府詩人スタニスラスとの死闘……。 大山が演じるのは、美輪が扮する王妃を護衛する、口を利けず耳も聞こえない召使いのトニーという難役だ。
(取材・文=今井浩一)

こんな素晴らしい機会をくださった美輪さんにとても感謝しています

―初日から一カ月以上たちましたが感想から伺いましょうか。

緊張感がすごくて、大変な世界だなと思いましたね、改めて。緊張感を毎日持続させるということが僕は初めての経験なんですよ。格闘技の試合は、その日一日に全人生を集中させるじゃないですか。それを毎日毎日毎日維持するのは初めてだったので、最初のころは体がついてこなかったですね。

―緊張感の種類は試合前と舞台の本番前と違うんですか?

ミスができないという意味での緊張感は同じだと思いますけど、格闘技は負けても僕だけの責任で終わる。でも舞台の場合は僕のミスが皆さんに波及しちゃう。そういうプレッシャーは大きかったですね。今も大きいですけど(笑)。

―それにしても緊張感で体がついてこないというのは意外です(笑)。

初めての経験なので力の抜き方とかいろんなものが分かってないんでしょうね。疲労感もすごいです。

―でもそろそろ、いい意味で馴れてきた部分とかもあるのでは?

そうですねぇ……でも開幕から一週間ぐらいたって、ちょっと馴れた自分がいたんですよ。「馴れてきたな」って思ったとたん、相手の持ったナイフを叩き落とすシーンで、落ちたナイフが客席のほうに飛んでいっちゃって。それでもう、「ああ、やっぱり緊張を持続してなきゃだめなんだな」って改めて思いました。俺、甘かったと。それからは気持ちを入れ替えて、わざと緊張させるようにしてますね。

美輪明宏さんの世界ってもう完璧じゃないですか。やっぱりそこにいられるってことは、逆にそれだけの覚悟を決めて上がりたいなと思ってるし、ミスもしたくないですからね。

本当はお断りしに行ったんです(笑)

宮本亜門

―話は前後するんですけど、美輪さんからオファーがあった時はどんな気持ちだったんですか。

美輪さんのことは前から尊敬していたし、声を掛けていただいた時はすっごいうれしかったんですけど、同時に「俺なんかがなんの経験もないのに出てしまって、迷惑をおかけしたらどうしよう」っていう気持ちが強くわいてきましたね。

―どのぐらい考える時間があったんですか?

一週間ぐらいしか猶予がなくて。

―アハハ(笑)。

しかも大切な試合の前で。本当は「すごい光栄なんですけどご迷惑をおかけしちゃまずい」という思いが強かったので、お断りするなら目を見て気持ちを伝えようと思ってお会いしに行ったんです。それが不思議なんですけど、美輪さんにお会いした瞬間、「やらなきゃ」って思ったんですよね、俺の人生を絶対変えてくれる人だって。そして出た言葉が「よろしくお願いします」だったんです。

―(笑)お詫びしに行ったのに。

はい。なんかオーラに包まれたような気持ちになって。でも今はあの時、決断して良かったなって心から思ってます。こんな素晴らしいチャンスを与えてくださった美輪さんには心から感謝しています。

―もともと舞台には興味があったんですか?

高校生の時に『ミス・サイゴン』を観て、もう度肝を抜かれたんですよ。それから舞台が大好きになって、めちゃめちゃ観てるんです。小劇場からミュージカルから分け隔てなく。TEAM発砲・B・ZINも好きですし、ごましお玄米舎を今井さんにも紹介しましたよね(笑)。もちろんパルコ劇場にも何回も来ています。

―役者としての勉強もしてるんですよね。

ちょっとでも演じるという世界に触れていたいなっていうのはあるんですよね。

―美輪さんからはアドバイスとか、大山君にはどういう期待をしてるみたいな話はあったんですか。

その世界にいられるように、準備をしっかりしなさいということはおしゃっていただきました。美輪さんはよく想像力とおっしゃるんですが、その役柄の歩んできた人生をすごく考えました。美輪さんは前世ぐらいまで想像していらっしゃるらしいんですけど。そういうお話をうかがったので、もうできるだけノートに自分なりに膨らませたことを書いていって。

―どういう人生を考えてみたんですか。

話すときりがないんで(笑)。でも作業は面白かったですね。結構書けましたね、本当に。何ページも何ページも書き始めると止まらなかったんです。想像って膨らませれば膨らますほど大きくなるんだなって、感じましたね。

―トニー役はどういうキャラクターで、どういう心情で舞台に立ってるんでしょうか。

王妃が唯一ベールを取って素顔を見せてくださる役がトニーで、そうやって信頼してくださっている役なので、王妃に対する忠誠心とか優しさとかそういうのを含めて、表現できればと思ってます。

―もの言わぬ役ですし、逆になにを考えてるのか隠す魅力もあるだろうし、考えていることをお客さんに伝えなきゃいけない部分もあると思うんですけど、そういう難しさっていうのはどうですか。

それは日々感じます(笑)。今言った、王妃に対する愛情や忠誠心を、じわじわっと出せればなと思ってるんですけど。それとトニーはすごく愛情の深い人物なんだなっていうのを最近感じてます。最初はただ強そうな体で相手を威嚇してっていうふうに単純に考えてたんですけど、その奥にある、王妃を守るための愛情とかスピリットがどんどん膨らんできています。やればやるほどに。

―しゃべらない役は、安易に見てるとラクチンそうだなとか思うけど、本当は全然そんなことないじゃないですか。この苦労たるや……。

苦労、苦労だらけですよ(笑)。共演者の皆さんの苦労見てると、ほんとすごいと思いますし。今回、本当に僕のできる範囲のものをやらせていただいてると思うんです。これで僕が一言でもしゃべった瞬間に、皆さんとは実力と経験も段違いなので、いろんなものが一目で分かってしまいますよ。せりふをしゃべらないで存在感を見せるっていうのは、僕は格闘技で何万人ものお客さんに囲まれて試合してるので、これは僕の財産なんですよね。そこで勝負できるっていうのはうれしいです。でも、これでせりふがあったら僕もうショートしてます(笑)。