野田秀樹が英語スピーチ 外国特派員協会記者会見 - 2007年7月 - 演劇ニュース - 演劇ポータルサイト/シアターガイド
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写真/▲野田秀樹

▲野田秀樹

 昨夏ロンドンで初演された英語戯曲『THE BEE』の日本公演に際して、劇作家・演出家、俳優としても活躍する野田秀樹が外国特派員協会のゲスト・スピーカーに招かれ、自らの活動のルーツと演劇人としての思いを英語で語った。

 昔から海外に影響を受け、創作意欲を駆られてきたという野田。16歳の時に世界的演出家ピーター・ブルックが手掛けた『夏の夜の夢』を観て以来、野田の(演劇への)夢は始まったという。87年のエディンバラ・インターナショナル・フェスティバルに『野獣降臨(ノケモノキタリテ)』が招かれたのをきっかけに、NYなど海外で次々に作品を披露。観客からの喝采やその評判に手応えを感じた。

 しかし、せりふにおける言葉遊びを得意とする野田の演出は、日本語の通じない海外公演でその意味をなさない。異国の土地で共通の言語抜きに異文化交流ができるのだろうか、と自身に問いかけ始め「夢から覚めた」と野田は言う。ロンドン留学で人間の身体と想像力を多用するテアトル・ド・コンプリシテ(*1)のワークショップに参加し、帰国後、国際的活動を視野に入れて作った二つの英語戯曲を完成させた。それが『赤鬼』(96)と、現在、世田谷・シアタートラムで上演中の『THE BEE』である。

 以下、質疑応答のもようを抜粋。

Q:『THE BEE』のシンプルなステージングはサミュエル・ベケット(*2)の作品のようですが。
ベケットだけでなく、近年の脚本家や演出家からも大きな影響を受けています。長い歴史の中で、日本の文化は西洋から多大な影響を受けてきました。けれど、時として保護するためにあえて伝統を破壊し、新しいものを取り入れることも必要。歌舞伎などは一度新劇によって排除されたように見えますが、良いものだから今に残っている。今回の『THE BEE』の飾り気の無さは、歌舞伎からきているものでしょう。良い劇というのは、国境にとらわれず必ず何か共通するものがあるのだと思います。

Q:日本の文化はどのように変わってきていると思いますか?
若い人たちの表現は欧米に影響されすぎて、日本人本来のアイデンティティーから切り離されていると感じます。でもそれはとてもセンシティブな問題で、文化は変わるのではなく、お互いに影響し合い、統合されるのです。だからこそ、注意深く見ておかなければならないと思います。

Q:これから何をしていきたいですか。
文化の境界線を無くしたいと思っています。ロンドン公演で(女優に男役を割り振るなどして)性や言葉の壁を取り払い、混合させたのも、“境”を越えたかったから。ただ、文化とは境界があるカオスの中でしか生まれない。演劇人はその混沌の中に身を寄せ、社会への深い理解とコミュニケーションを得ることが必要です。私は自分の作品で今あるものを侵略するのではなく、多くの人と世界観や価値観を分かち合いたいと思っています。

*1)身体の動きを重んじ、テキスト、音、イメージを融合させる新しい演劇を意図した演出家サイモン・マクバーニー主宰の劇団。
*2)不条理演劇を代表するアイルランド出身の作家・劇作家。主な作品に『ゴドーを待ちながら』『しあわせな日々』がある。