庭劇団ペニノ『誰も知らない貴方の部屋』7月はこぶね公演、タニノクロウ開幕直前インタビュー - 2012年6月 - 演劇ニュース - 演劇ポータルサイト/シアターガイド
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庭劇団ペニノ『誰も知らない貴方の部屋』1

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7月3日(火)に初日を迎える、庭劇団ペニノ『誰も知らない貴方の部屋』。今年2月に初演され、以降2カ月に一度のペースで上演を重ねてきた注目作が、青山のマンションの一室・アトリエはこぶねに再登場する。初日を目前に控えた6月下旬、作・演出のタニノクロウに、本作について話を聞く機会を得た。

【2月の初演以来、短期間で上演を重ねて、東京では今回が3回目の上演です】

あそこ(はこぶね)でやる時は、セットがいつも強引なので(笑)、役者が場になじむまで、ずいぶん時間がかかるんですよ。それがちょっとずつ積み重なってきたな、というのが今の感じ。あと、5月に大阪でもやって、違う場所でやったことで別の発想も生まれて、変わって来たのかなと思います。

【このハイペースでの上演は最初から決めていたんですか?】

そうですね。はこぶねが今年で最後なので……というのは、あの建物自体が今年いっぱいでなくなっちゃうんですよ。渋谷第一期ころ、渋谷にまだ何にもないころに建てられたビルなんですけど、それを、どんどんいま潰す方向にいってるみたいで。僕は20年くらい前からあそこに居て、はこぶねにしてからも8、9年経ちますけど……もったいないですよね。来年1月が着工なので、今年は一人でも多くの人に、ああいう場所があったんだっていう観劇体験をしてもらおうと思ってて。そういうのって、そんなに忘れることではないだろうなと思うんですよ。お客さんが後々「ああいう場所があったな」って思い出してくれれば、そういう人が一人でも増えたら良いなって。

【今回の上演の前に大阪公演もありましたが、それを踏まえた演出面での変更はありますか?】

音ネタをずいぶん変えました。中から聴こえてくる音によって、もっとあの世界に広がりが出るような、中は狭いけど、外はすごく膨大に広がっているというような効果を加えましたね。

【音と言えば、開幕直後のシーンが、短いけれどとても印象的です】

冒頭のシーンはすごく意識してます。はこぶねって、最初に青山劇場の横に並ばされて、「静かにしてください」って言われて5人ずつピストンで入って行くでしょう? でも幕が開いたら一発で、ここはマンションだったってことを忘れるような時間が流れ出す、そのぐらい強烈に引き込むことを意識してるんです。こっちからぐっと提示するんじゃなくて、なんとなく引いて観てたお客さんが、「何だこれ」って前のめりになってくれるような。

庭劇団ペニノ『誰も知らない貴方の部屋』2

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【『誰も知らない貴方の部屋』は、やはりはこぶねで上演された『苛々する大人の絵本』(08年初演)と、登場人物やセットなど共通する部分が多いですが、連作の構想は最初からあったのですか?】

そうですね。『苛々する〜』は僕が精神科医をやってたころに聞いた、ある受験生の患者さんの妄想がもとになっていて、それに僕の妄想を交えています。実直な受験生だったんですけど何度か浪人してて、すると食事と睡眠のバランスが悪くなるじゃないですか。で、ある日なぜか夢にブタとヒツジが現れて、話しかけてくると言う。食欲のブタと睡眠のヒツジ、ということなんでしょうけど。本当にまじめな子で、イヤらしいことを考えるのは罪だっていう強迫観念もあって、でも夢の話を聞くと「それ、どう考えてもエロいこと考えてるんじゃないの?」っていう夢ばかりで。その夢の話の中で出て来た要素みたいなものが、例えば天井に突き刺さった木とか、やたら垂れて来る樹液とか、そういう形で現れています。

『誰も〜』は、それよりもう一歩踏み込んだもの、というイメージ。『苛々する〜』ではさまざまな“性”のモチーフをメタファーとして織り込んでいたんですけど、そういうまだるっこしいことを排してそのまま見せるっていう、すごいばかばかしい発想で作りました(笑)。女性に比べると男性の身体って見所があまりないと思うんですけど、唯一見所があるのはペニス周り。その唯一のものがつくりたいっていう欲求から、まあ、やり過ぎてしまったんですけど……(笑)。

どちらも1時間くらいの作品なので、いつか2作同時にやれたらいいなあと思ってます。セットの規格も一緒だから、暗転40秒くらいで入れ替えして……まあそれは夢みたいなものですけど。

【え、あのセットの入れ替え? でも、今回の美術も相当凝っていますよね(笑)】

確かに今回が今まで一番時間がかかったし、正直、挫折しそうになりましたね(笑)。膨大な作業量になるって想定がなくて、たいしたものではないだろうと思っていたら、入れ替わり20人くらいで2カ月にわたりコツコツと……それでも本番にギリギリ間に合うくらいで。あんなに大変とは思わなかった(笑)!

でも、ああいう小さなところに知恵が詰まっているのが面白いなと思うんです。時計だって、これだけ小さな箱の中にいろんな歯車がものすごい計算されて詰まってる。そういうのが好きなんですよね。はこぶねは本当に狭いけど、でもあれだけのスペースがあればそれなりに面白いことが作れると思うし、はこぶねでつくったものには、僕自身、愛着があるんです。

【確かに、定員30名程度の小空間であれだけ凝った作品が観られるというところが、はこぶね公演の醍醐味ですよね】

そうですね。僕、どこかで演劇って自慰行為に近いものを見せている感じがまだあると思ってて。でも面白い自慰行為であれば、それでもいいんじゃないかと思うんです。はこぶねの作品は特にそうで、演出家の悪趣味みたいな部分を見せると言うか。一般的にそれは良くないって言われたりもするけど、でもものすごいやり方の自慰行為であれば、押し出しで勝てるんじゃないかな(笑)。だから本当は、はこぶねでもっともっとやりたかったんです。

いま第2のはこぶねを探しているんですけど、若者とかお金をもった人たちが最先端を見つけに来るような渋谷、原宿、表参道あたりがいいんですよね。ヴィトンとかの隣に、ちょっとへんてこな世界があるっていう(笑)。それは、こちらもすごく作りがいがあるなって思うんですけど。

【では、第2のはこぶねが見つかれば、このシリーズはまた続く可能性があるのですね!】

そうですね。なんとかしますよ、きっと。その辺の執念だけは、人一倍あるので。

取材・文=熊井玲

インフォメーション

庭劇団ペニノ
『誰も知らない貴方の部屋』

【スタッフ】作・演出・美術=タニノクロウ
【キャスト】飯田一期/島田桃依/瀬口タエコ/山田伊久磨

2012年7月3日(火)〜10日(火)
・会場=アトリエはこぶね
・チケット発売中
・料金=全席自由2,500円

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