宮城聰演出×尾上菊之助出演 芸術祭十月大歌舞伎『マハーバーラタ戦記』製作発表会 - 2017年8月 - 演劇ニュース - 演劇ポータルサイト/シアターガイド
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『マハーバーラタ戦記』会見 1 左から、青木豪、宮城聰、尾上菊之助、尾上菊五郎

▲ 左から、青木豪、宮城聰、尾上菊之助、尾上菊五郎

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世界三大叙事詩の一つとされる古代インドの叙事詩「マハーバーラタ」が、青木豪脚本×宮城聰演出×尾上菊之助出演により歌舞伎化。歌舞伎座「芸術祭十月大歌舞伎」にて上演される新作歌舞伎『極付印度伝 マハーバーラタ戦記』の製作発表会が都内で行われた。

2003年に初演され、海外でも上演を重ねる祝祭音楽劇『マハーバーラタ〜ナラ王の冒険〜』を手掛けた宮城。今回の歌舞伎演出初挑戦には「現代演劇を日本で演出していて、ヨーロッパと比べて恵まれていると思うのは、伝統的な演劇が最前線で活動していること」と語る。

宮城は「パリのコメディ・フランセーズも、歴史で言えば歌舞伎と同じくらいなんですが、300年前の演劇が残っていない。すべて現在のものに一新されてしまっていて、100年前の俳優がどう喋っていたとか伝わっていないんです」と海外の状況を挙げる。続けて「ヨーロッパの演劇は、演技のスタイルが時代ごとに変わっていくけど、戯曲・文字だけは残っていく“テキストが演劇の主役”で、俳優はテキストをどう伝えるかを考える。日本の伝統演劇では、俳優の身体から言葉が生まれる瞬間を見ていて、俳優の肉体と言葉の関係、俳優が言葉と出会う瞬間の変化を面白がっている。こういうことが日々見られるのが、日本で演出家としてやっていて素晴らしいと思うところ」と分析する。

そして、「日本では、新しい作品の演出でも、俳優・演出の技術は、日本の伝統演劇から学んで演出できるんです」と述べ、本作に向けて「僕がこの何十年かで発見してきたものを駆使して歌舞伎を演出することで、もしかしたら100年後、200年後の未来の演劇人に参考にしてもらえるかもと思うと非常に夢が持てる」と目を輝かせる。さらに「“三国一の美女”というと、日本・中国・インドだし、『今昔物語』でも天竺=インドがある。インドからの大きな影響があったはずなのに、インドを舞台にした歌舞伎はないそうです。中国を舞台にした古典歌舞伎『国性爺合戦』のように、僕らの『マハーバーラタ』も古典中の古典になれたら」と意欲的な姿勢を見せた。

脚本の青木は「『マハーバーラタ』は神々と人間が触れ合っていたり、本当に物語が大きく、僕らには想像できない出来事が起こるんです。僕は、普段は市井の人々の会話劇で、歴史劇でも神々と触れ合うことがなくて(笑)、宮城さんは絶えず“世界と演劇”の話をいつもされるので、僕も大きくなりたいと思いながら格闘して書きました」とその執筆過程を回想した。

壮大な長編を舞台化するにあたり、今回は、カルナ(本作での役名は迦楼奈)の目線を主軸にする。そのアイデアを青木は「カルナは、五兄弟と百人兄弟の両家の王権争いに、脇から関わる存在になるので、主軸を観察することもできるし、中からも入れるし、物語を全体的に見られるのではと考えました」と解説した。

その迦楼奈とシヴァ神の二役を演じるのは菊之助。「2014年9月の横浜で、初めて『マハーバーラタ』に触れて、感銘を受けました。神様と人間の織りなす物語と音楽、アジア全体を思わせるような演出で、これを歌舞伎にできるのではないかと、宮城さんに相談したところからプロジェクトがスタートしました。12年ぶりに歌舞伎座で新作をつくることができて、本当に気合が入っています」と意気込んだ。

シヴァ神を表現する色は紫・青だそうだが、これに菊之助は「歌舞伎では本来、青の化粧は鬼の表現ですが、今回のシヴァ神には、その色を取り入れてみようかと考えています」とコメント。作品の魅力には「両家の対立構造は、あたかも源平合戦のようでもありますし、カルナという人物は両家のどちらもにも属し、どちらもにも属しておらず、戦を止める使命を受ける。さながら“一枝を切らば一指を切るべし”という熊谷直実のよう」と古典歌舞伎との符号を挙げながら紹介した。

那羅延天(ならえんてん)/仙人 久理修那(くりしゅな)の二役で登場する尾上菊五郎は「なにやら松竹さんと菊之助がごそごそと話をしていて、私は何も聞かされていなくて、いらないんじゃないかと思ったんですが(笑)」と笑いを誘いながらも、「菊五郎劇団は元来、新しいものに挑戦するのが伝統。ワクワクしながら芝居づくりをしていきたい。日印の流行りモノというとカレーライスですかね。インドのものが日本風で広まったように、歌舞伎の様式美と合体したものを皆さんに観ていただきたい」とアピールした。

歌舞伎とは違う、現代演劇のクリエーターとの創作に取り組む菊之助たち。菊之助は「普段、常識にしていいる所作や型が、今回の新しい脚本にどう生かせるか? まず常識としていることを疑うことが、現代劇の演出家との稽古では感じるところ。宮城先生は歌舞伎ではどうするか? 私も現代劇ではどうするか?と、お互いに問いかけながらつくっていくことになると思います」と話す。

菊五郎も蜷川幸雄演出『NINAGAWA 十二夜』を振り返り「歌舞伎では幕のつなぎで、風音という太鼓の音を鳴らしますが、蜷川さんは汚い音だから嫌だと、オルゴールのような音になり、なるほどと思ったんです。僕たちには常識だと思っていることが演出家でガラッと変わるんだと思い出しました」とうなずき、稽古に向けて「私どもも、宮城さんも手探りかと思いますが、稽古で日数を重ねる中で、共通点や探しているものを掴み合っていくのが楽しみ。演出家が何を考えているのか、手探りの状態からドッキングできたら、とてもおもしろいものができるのでは」と期待を寄せつつも、「まず、名前を覚えるのが大変!(笑) きっと笑いながらの楽しい稽古になるでしょう」と笑った。

一方、宮城も「きっと、普段ならどうしますか?と教えてもらってからのスタートになるでしょう。ただ僕は“美”に確信があります。美を感じない人はいないし、とある地域で美しいと感じられるものは、世界のどこへ持っていっても美しいとされますよね。不思議なことですが、それを信じていますので、僕なりに、これが“美”なんだと、提示させてもらえれば、共通の理解に至るだろう」と力強く語る。

宮城ならではの発想はもとには、奈良時代の人びとのイメージがあるという。宮城は「奈良時代の正倉院にある宝物など、日本には古くからインドの物と話は伝わっているもの。奈良時代くらいにインドの物が入ってきた時に、当時の人は、その物の向こうにあるにインドの姿や風景を、どう想像し、どうデザインしただろうか? というのが、僕の基本的な発想なんです」と明かした。

加えて、「僕らはインドと言えばタージ・マハルなどを連想しますが、それはイスラム教が入ってきてからのスタイルなんです。『マハーバーラタ』は紀元前400〜500年の世界観ですので、それよりも古いもの。僕らの思うイメージにあるような、後にインドに入ってきて、今では“インド風”と思われているものを迂闊に取り入れないように、それよりももっと前のものなんだと考えるようにしています」と語った。

最後に4人はそれぞれに「歌舞伎の様式美を自然にお客さんに観ていただける、『これは歌舞伎だな』と思ってもらえる作品にしたい」(菊五郎)、「長い物語の中でも、有名な場面見せ場を抽出して選んでいます。通し狂言の『忠臣蔵』のように、『マハーバーラタ』のエッセンス、歌舞伎のエッセンスを凝縮したものをご覧いただける」(菊之助)、「何百年もの間で練りに練られた歌舞伎の蓄積と、“今日の世界をこのように見ると希望が見えてくる”あるいは、“今日の世界に対して劇場からこのようなメッセージを発する”という最先端の演劇と両方が実現する」(宮城)、「初めての歌舞伎だった『忠臣蔵』も、宮城さんの『マハーバーラタ』も、ひたすらきれいだなって思って観たんです。日常をしばし忘れてものすごくきれいなものを観にお越しいただけたら」(青木)、と観客へ向けてメッセージを送った。

この記事の写真

  • 『マハーバーラタ戦記』会見 1 左から、青木豪、宮城聰、尾上菊之助、尾上菊五郎
  • 『マハーバーラタ戦記』会見 2 宮城聰
  • 『マハーバーラタ戦記』会見 3 青木豪
  • 『マハーバーラタ戦記』会見 4 尾上菊五郎
  • 『マハーバーラタ戦記』会見 5 尾上菊之助
  • 『マハーバーラタ戦記』会見 6 左から、青木豪、宮城聰、尾上菊之助、尾上菊五郎、安孫子正

インフォメーション

日印友好交流年記念
歌舞伎座「芸術祭十月大歌舞伎」昼の部
新作歌舞伎『極付印度伝 マハーバーラタ戦記』三幕

【スタッフ】演出=宮城聰 脚本=青木豪
【キャスト】尾上菊之助 ほか

2017年10月1日(日)〜25日(水)
*昼の部は11:00開演
・会場=歌舞伎座
・一般前売=9月12日(火)開始
・料金=全席指定1等席18,000円/2等席14,000円/3階A席6,000円/3階B席4,000円/1階桟敷席20,000円

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