パリ・オペラ座バレエ団トップダンサーが舞う 「ル・グラン・ガラ 2018」公演レポートが到着 - 2018年1月 - 演劇ニュース - 演劇ポータルサイト/シアターガイド
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パリ・オペラ座のエトワールである、マチュー・ガニオ、ドロテ・ジルベール、ユーゴ・マルシャン、ジェルマン・ルーヴェと、プレミエール・ダンスーズのオニール八菜が、イタリア人振付家ジョルジオ・マンチーニの作品を踊る「ル・グラン・ガラ 2018」が開幕。その2日目を観た。

このガラの特長は、リヒャルト・ワーグナーの音楽のみで綴る2部構成であること。前半の『ヴェーゼンドンク歌曲集』は今回が世界初演。ワーグナーが恋人であったヴェーゼンドンク夫人マティルデの詩に作曲したこの曲で、オニール八菜、ジェルマン・ルーヴェ、ユーゴ・マルシャンが踊った。

幕が開くと、レオタード姿のオニール、タイツ姿のルーヴェ、マルシャンが、身を寄せ、腕を絡ませている。上体を屈ませ、後ろ手で羽ばたくような動きを見せるオニール。その左右で、ルーヴェとマルシャンがたゆたうように踊る。オニールがマティルデ、ルーヴェがヴェーゼンドンク、マルシャンがワーグナーということにはなっているが、3人にキャラクターを感じさせる要素はなく、男性2人に至っては鏡のように対称的な動きが続く。彼らが、女性をリフトすることもあれば、まるで恋人同士であるかのようなデュエットを展開する場面もある。

ヴェーゼンドンク歌曲集の第3曲「温室」と第5曲「夢」には「トリスタンとイゾルデのための習作」の副題がつけられており、『トリスタンとイソルデ』そっくりの旋律が流れるだけに、青い照明が『トリスタンとイゾルデ』の海のように見え、大海を彷徨う3つの魂を想起。虚飾のないその踊りが、若い3人によく合う。殊にオニールの清廉な美しさが光っていた。やがて3人が、冒頭と同じように身を寄せ、腕を絡ませ合い、終幕。

休憩後、幕が開くと、ドロテ・ジルベールが後ろ向きに立っている。彼女が舞台前方に媚薬の入った盃を置き、両腕を広げると、『トリスタンとイゾルデ』の始まりだ。後ろには船の帆のような白い布。イゾルデのジルベール、トリスタンのマチュー・ガニオが、手を取り合い、同じように身を反らせ、代わる代わる相手に触れ……。先程の『ヴェーゼンドンク歌曲集』で男性二人に見られた対称性が、ここでは宿命の恋人たちの踊りにあらわれる。ゆっくりと呼吸するようなワーグナーの音楽を、動きが忠実に再現。そこに時折ノイズや水音が混じり、不思議な効果をもたらす。

やがて、媚薬を飲み、震える手で相手に触り、抱き合うだトリスタンとイゾルデ。広げた両手を重ね合わせ、口づけをしたまま去る姿が印象的。愛を交わす2人。その動きの対称性、同一性は徹底している。そして、場面は有名な「愛の死」へ。マルケ王も従者も介在せず、終始、ただトリスタンとイゾルデの2人だけが、運命の愛に恐れ慄きながらも身を委ね、そして、トリスタンの死という一つの終わりを迎えるのだ。最後、静かに身体を横たえる2人の姿が胸を打つ。

こうして見ると、『ヴェーゼンドンク歌曲』も『トリスタンとイゾルデ』も、個としての属性を超えた存在として、音楽の本質へとたどり着こうとする作品だったように思われる。なお、「スペシャルフィナーレ』で流れたのも、ワーグナーの『タンホイザー』序曲。一貫した美学を感じさせる一夜となった。

(文=高橋彩子)

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