演出・上村聡史「想像力で“浄化”される作品」 ワジディ・ムワワド作『岸 リトラル』が上演中 - 2018年2月 - 演劇ニュース - 演劇ポータルサイト/シアターガイド
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『岸 リトラル』開幕 1 中嶋朋子(左)と亀田佳明

▲ 中嶋朋子(左)と亀田佳明

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2014・17年にシアタートラムで上演され好評を博した『炎 アンサンディ』を執筆したレバノン出身の劇作家ワジディ・ムワワド。彼が発表した「約束の血4部作」の1作目『岸 リトラル』が、同劇場で20日より上演中だ。

物語は、青年ウィルフリードが、ずっと疎遠だった父イスマイルの死を突然知らされるところから始まる。死体安置所で変わり果てた姿の父親と対面したウィルフリード。彼は、自分を生んですぐにこの世を去った母ジャンヌの墓に、父の亡骸を一緒に埋葬しようと決意するのだが、母の親族たちから猛反対される。どうやら、父と母には封印された過去があったようだ……。突如起き上がった父の死体とともに、内戦の傷跡がいまだ癒えぬ祖国へ向けて、奇妙な父子の旅が描かれる。

演出は、前作『炎』も手掛けた上村聡史。初日を迎えた上村とキャストのコメントは以下の通り。

■上村聡史(演出)
初日を終えて感じたのですが、この作品はお客様とつくり手が一体となって、想像力で“浄化”されるような作品だと思います。もちろん、そこに至るまではつらいことも語らなくてはいけないですし、難しいか難しくないかでいうと、難しい芝居かもしれないです。でも心地よい爽快感もあって、感覚的に伝わることが大事な作品でもありますので、最後のシーンでのお客様の反応を見て、それを受け取っていただけたのかなと感じています。これを40日でつくれたのは、奇跡的なことなんじゃないかと。実力のあるスタッフと、セリフを真摯に届けるキャストが集って、そのチームワークがあったからこそできたことだと思います。
破壊力のある熱量で“死者”のイメージを覆す岡本健一さん、ナイーブさをもちながら言葉を紡ぐ亀田佳明くん、みんなの合わせ鏡として存在してくださる大谷亮介さん、そして中嶋朋子さんが登場すると世界観が大きく広がり、栗田桃子さんの言葉を記憶に刻み込むような声、小柳友くんのまっすぐさ、鈴木勝大くんの知性、佐川和正さんの熱量がみんな合わさって、若いころのワジディ・ムワワドの理想が描かれた世界をつくりあげてくれました。ステージを重ねるごとに熟成してお客様に届けられたらと思っています。

■岡本健一 イスマイル役
オリンピックに負けない感動と興奮、あと生のエネルギーというものを、この劇場に来たら感じてもらえると思います。いまここに生きている自分たちへのメッセージを、この作品は伝えてくれるような気がしています。この登場人物たちはさまざまな人との出会いによって人生がいい方向に変わっていく。それと同じように、僕たちも上村くんが船頭となって導いてくれる船に、みんなで全身全霊を込めて信じて乗っかっていく。そしてその船から海へ落ちたら落ちたで、まあいいんじゃないか、と落ちてしまった人の感想を聞く、「どうだった? 海の中は? おぼれた時、苦しさはどんな感じだっ
た?」みたいに。
自分が演じる父イスマイルは既に死んでいるという設定ですが、自分自身死んでしまった人も、目には見えていないだけで存在している感じがします。亡くなった先輩や仲間たち、そして、アーティストやミュージシャンたちからものすごい刺激を受けていることを常に実感しています。彼らの遺した足跡や遺品は、確実に今を生きているという力がありますよね。父イスマイルとして、“死人”として目を閉じて舞台上にいる時には、波動というか、どこに向かうのか分からないような見えない流れを感じています。この波に自分も乗りながら、最後はお客様を巻き込んでいきたいと思っています。

■亀田佳明 ウィルフリード役(イスマイルの息子)
初日を終えましたが、明日またどういうふうに挑めるか、という危機感のような、緊張感のような、落ち着かない状態の中、初日乾杯でビールを飲んでいます(笑)。上村さんは作品の根っこを掘り下げることに対して労をいとわない、さぼらない、ひたすら掘り下げる。ですので、こちらもつきつけられる発見が多くあります。共演者の皆さんもとてもクリエイティブで、見ていて自分はこう思うというポジティブな発言がたくさん飛び交う現場で、とても助けられています。
常に舞台上にいるウィルフリードとしては、写し鏡のように相手役の方と向き合うことでしか演じられないと感じています。千秋楽までとにかく瞬間瞬間、高みを目指してウィルフリードとして存在していきたいです。

■大谷亮介 騎士ギロムラン役/監督役/ワザアン役
初日を終えてまず「いやあ、よく頑張った、ホントよかった!」と、舞台袖で共演者と喜び合いました。3時間半の翻訳劇、ほぼ全員が何役も演じるので出ずっぱり、セットも入り組んでいるというハードな芝居をやり切ったのは、いろんな感慨があります。と同時に、千秋楽までこれをやるんだという緊張感もあります。
ウィルフリードの空想上の人物である騎士ギロムランと映画監督、あと盲目の老人ワザアンの3役を演じる中で、特に抽象的なギロムランをどう演じるかというのは稽古場では苦労をしました。でも実際に、人間には現実だけでなく、頭のなかには空想が常にあるものなので、現実をただつらく描くだけではないこの作品でも、必要な登場人物だと思って演じています。

■中嶋朋子 ジャンヌ役(イスマイルの亡妻)/シモーヌ役 ほか
旅が始まった! という気持ちです。初日の公演で「お客様が受け止めてくれている」「一緒に旅をしている」という実感が波のように襲ってきました。そして自分たちでは見つけられないゴールに、急に連れて行ってくれた感じがして、とてもうれしかった。すごい感覚、体験でした。私が演じる母ジャンヌと歌う娘シモーヌ、そして栗田さんが演じるジョゼフィーヌには“女性性”“母性”など、どんな人にも深いところでつながっていく部分が描かれていると思います。ムワワドさんが仲間たちとつくり上げたエネルギーがこの戯曲の中にあるので、それと同じようにみんなで意見を出し合い、自分たちの力をぶつけ合いました。板に乗っている私たちは、旅を続けるのみで、道筋もゴールも決めずに行くことに意味がありそうです。そうしたらお客様にいざなってもらえる。安心して荒波に飛び込んで行こうと思います。

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