“悪の華”満開で送る、歌舞伎座「四月大歌舞伎」が上演中 - 2018年4月 - 演劇ニュース - 演劇ポータルサイト/シアターガイド
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「四月大歌舞伎」開幕 1

▲ 『絵本合法衢』より、高橋瀬左衛門(坂東彌十郎:左)と左枝大学之助(片岡仁左衛門)

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4月2日(月)、歌舞伎座で「四月大歌舞伎」が開幕。昼の部『裏表先代萩』では尾上菊五郎が、夜の部『絵本合法衢』では片岡仁左衛門が一人二役で悪役を演じ、観客を沸かせている。

昼の部は、『西郷と勝』と『裏表先代萩』の二本立てだ。『西郷と勝』は、真山青果作の明治維新三部作『江戸城総攻』をもとに改訂したもので、江戸城総攻めを前に薩摩藩の江戸屋敷で話し合う西郷吉之助(尾上松緑)と勝麟太郎(中村錦之助)のやりとりを中心に、ち密なセリフ劇として描いている。お互いを尊敬し合う二人の腹を割った談判後、西郷は今回の江戸下りで心を動かされた三つのことを話し始めるが、ここからが聴きどころ。膨大なセリフを感情豊かに語り続ける松緑からは、西郷の人間味、スケールの大きさがにじみ出ており、語り終わった時には客席から大きな拍手が起こった。

続いての通し狂言『裏表先代萩』は、伊達家のお家騒動に材を取った名作『伽羅先代萩』と、その陰で起こった町医者殺しの話を“表裏”として、時代物と世話物を交互に見せていくユニークな作品だ。足利家のお家乗っ取りを企む執権の仁木弾正は、家督を継ぐ幼い鶴千代を亡き者にしようと、町医者の道益に毒薬の調合を依頼し二百両を支払う。道益を殺し、この金を盗んだのが下男の小助。妖術も操るなど怪しさ溢れる弾正と、悪党ながらどこか愛嬌も感じさせる小助というタイプの異なる悪役を、菊五郎が23年ぶりに演じている。また、わが子を犠牲にして鶴千代を守る女方の大役・乳人の政岡を、初役で勤める中村時蔵にも注目したい。

そして夜の部は、仁左衛門が“一世一代”と銘打って勤める通し狂言『絵本合法衢』。“立場の太平次”の通称で知られる四世鶴屋南北の傑作だ。『裏表〜』と同じく、お家乗っ取りを企む左枝大学之助を描いた時代物と、大学之助の配下・太平次を中心とした世話物が並行して進んでいく。物語の中で、“うり二つ”という設定の大学之助と太平次を演じるのが、1992年以来5回目、歌舞伎座では初となる仁左衛門だ。

近江国多賀家の乗っ取りを企む分家の大学之助は、多賀家の重宝“霊亀の香炉”を盗み出し、邪魔な存在であった家老・高橋瀬左衛門(坂東彌十郎)を斬るが、瀬左衛門だけでは気が済まずに高橋家の者たちを皆殺しにしようとする。それに手を貸すのが、配下の太平次だ。自らの欲のためなら、幼子、家来、仲間、妻でさえもちゅうちょなく殺してしまう二人は、現代の感覚で観れば、まさにサイコパス。なのだが、人間の欲、業、残虐さの表現にこそ、歌舞伎の醍醐味でもある様式美が光り、善悪の概念を超えて目を奪われてしまうから不思議だ。

登場しただけで空気が凍りつくような冷たい威厳を持つ大学之助、どうしようもない悪人なのにそこはかとない色気を漂わせる太平次−−仁左衛門の咲かせる“悪の華”満開で送る。もちろん、“悪”だけでなく、瀬左衛門の仇を討とうとする善人たちのドラマにも胸を打たれる。今回で演じ納めとなる同演目、どうぞお見逃しなく。

公演は4月26日(木)まで。

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