中村七之助が立役に挑む コクーン歌舞伎『切られの与三』製作発表会 - 2018年4月 - 演劇ニュース - 演劇ポータルサイト/シアターガイド
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コクーン歌舞伎『切られの与三』会見 1 左から、木ノ下裕一、中村梅枝、中村七之助、串田和美

▲ 左から、木ノ下裕一、中村梅枝、中村七之助、串田和美

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5月に上演される渋谷・コクーン歌舞伎 第16弾公演『切られの与三』の製作発表会が、シアターコクーン稽古場にて行われた。

今回の演目は、1853年(嘉永6年)に江戸中村座で初演された『与話情浮名横櫛』が原作。当時の実話を題材にしたと言われる講談をもとに、三世瀬川如是が歌舞伎化したもので、「切られ与三」「お富与三郎」という通称で親しまれる、江戸世話物の中でも人気狂言の一つだ。

原作は九幕十八場という長い芝居のため、全幕上演されることはなく、通常では、与三郎とお富が出会う序幕「木更津海岸見染」の場から、二人が再会する有名な三幕目「源氏店(げんじだな)」の場まで、もしくは、「源氏店」の場面のみの単独での上演が多い。

今回は、上演にあたり、普段上演されないすべての場面を洗い出し再構築。与三郎の疾走するような人生と、因果の渦に巻き込まれ、運命に翻弄される人びとの生きざまを描き出すという。

今回の演目は、演出・美術の串田和美が「ずいぶん前からやりたいと思っていた」というもの。その理由を「講談をもとに、いろいろなものが混ざって歌舞伎になり、その歌舞伎も、その時々の社会に伴って動いて動いて変わってきたんだと思うと、とても面白い作品。そろそろ新しいものがあってもいいんじゃないか」「皆さんがよくご存知の話の後もものすごく長くて、与三郎が傷を負って生き抜く物語に興味があった。大きな歴史のようでもあり、一瞬の物語のようでもあり、いろいろなものが詰まった悲しさみたいなものが読み取れる」と語る。

そして、コクーン歌舞伎そのものの成り立ちにも触れ「コクーン歌舞伎という名前は、ただシアターコクーンでやるからというだけではない」と述べる。「オープンにあたって、劇場のイメージを話し合った時に、客同士のにぎわいがあるのが本来の劇場で、それは歌舞伎小屋のイメージだった。劇場デザイン自体は、歌舞伎と縁遠い真逆のものだけど、その奥にある演劇、つまりは、人との交わりとはこういうものだ、というものが、にじみ出て歌舞伎をやることになったんじゃないか」と感慨深い表情をのぞかせた。

串田とともに、補綴として参加するのは「木ノ下歌舞伎」の木ノ下裕一。「こんな光栄なお仕事をいただきまして、戦々恐々としているところ(笑)。子供の時に、演劇界のバックナンバーを買い漁っていて、第1回目の『四谷怪談』の稽古場のレポートを見て、面白そうなことを東京ではやってるんなと和歌山で思っていたのが最初。2003年に初めて観た時は、次の日に熱を出して寝込んだくらいに興奮にした」とシリーズへの思い入れはたっぷりだ。

その魅力を「いつも感動するのは、古典でありながら人びとや物語が、現代人と地続きであり、手触りを感じられること。及ばずながら、そういうお芝居をつくるお手伝いができたらと、死ぬ気で頑張るつもり」と分析しながら、この取り組みに力を込めた。

与三郎を勤める中村七之助は「父(勘三郎)が残してくれた宝物の一つ、コクーン歌舞伎をまたやらせていただけること、本当にうれしく思います」と挨拶。今回は立役に挑むということもあり「不慣れな状況でして、安孫子正(松竹)副社長は『すてきなキャスティング』と言われましたが、その自信は、今のところはないんですが……(笑)、私なりに与三郎を良いものにできたら」と笑いを誘いながらも意気込んだ。

配役が発表された時のことを振り返り「真っ先に、楽屋に飛んできたのが、現・(松本)幸四郎さんと(片岡)愛之助さん。『傷はこう書くんだよ』と、聞いてもいないのに教えてくれて(会場笑)、そんな先輩二人に、やはり立役にとっては思い入れのある役なんだなと感じました」とエピソードを披露。「また違った与三郎にはなると思うんですが、先人たちが残してくれたそういう思いは、どこか腹にしまってやらなくちゃいけないと痛感している」と気を引き締めた。

七之助の相手役・お富を担うのは、コクーン歌舞伎初参加の中村梅枝。「不安にワクワクと、非常にいろいろな感情が入り混じっております。女方の先輩・七之助の兄さんが立役ということで、お客様に『七之助の女形が見たかった』と言われないように(笑)、一生懸命勤めてまいります。一番歳が近い女方の先輩で、尊敬する反面、非常に嫉妬しているところも多い。兄さんにはない僕の良いところもたぶんあると思っているので、相手役としてうまくハマっていけたら」と気合を入れる。

役づくりには「お富は古典では一度やらせてもらいましたが、古典はどうしても形から入る部分があるので、こういう機会である以上、イチから精神的、内面的なところからつくれたら」と意欲的。「現段階では出てくるたびに違う女性像ですね。与三郎は本気で好きだったけど、その後に会うたびに、与三郎への気持ちに一貫性を通した方がいいのか、ない方がいいのか、一言で言えば“性悪な女”な、つくり方にしようかと」と創作過程を垣間見せた。

なお、今回のチラシビジュアルに使われているイラストは、串田自ら描いたもの。串田は「『天日坊』の時に、こういう感じでできないかと、イメージを下書きした絵が使われたんだけど、今回も試行錯誤している中で、こういうふうにしたいと、ちょこっと鉛筆で書いたものが使われたんです。(七之助が)『天日坊』の絵が好きだって言ってくれたのも実はうれしくて、それじゃあそうしようと」とそのきっかけを述べたのだが、イラスト採用の理由の一つには、七之助のコクーン歌舞伎へに挑む姿勢もある。

七之助は「今回、チラシに名前が載っているメンバーには、コクーン歌舞伎を初めた時のメンバーがいない。それだけいろいろなことが変わってきているし、やるなら最初から携わりたいと思った」と、当初のチラシデザインからの変更を願い出たのだという。

「デザインを話し合っていて、今までのポスターが並ぶ中で、絵の力ってすごいなと感じて、僕はすぐ監督(串田)の絵が良いと、全面に出した形になりました。僕はすごく満足しています」と胸を張った。

先述の七之助の言葉にある通り、変化していくコクーン歌舞伎だが、その中にも変わらないものが存在する。それは「一番最初に立ち上げた時の熱量」だと七之助は話す。

「父や串田監督が、稽古場でつくり上げた熱量を肌で感じていますので、みんなに染み付いた魂がある。この稽古場に入った時点で、みんながスイッチを切り替えてくれるので、僕が何もしなくても付いてきてくれる。それは串田監督がつくり上げたもので、どんな人も平等で、どんな意見もみんなで試す楽しい稽古場」と充実した様子だ。

この姿に梅枝も「七之助の兄さんが精神を受け継いでいるので、不安はない。自分には、そのスイッチがまだないので学びたい」と信頼を寄せた。

近年のコクーン歌舞伎といえば、音楽も注目ポイントの一つ。今回については、串田から「疾走」というキーワードが聞かれた。「疾走には、走り抜ける快感と、走ることの苦痛のイメージがある。すると、ジャズのメロディーが頭に流れてきました。コクーン歌舞伎ではいろいろな楽器があったけど、ピアノが一度もなかったんです。ピアノと歌舞伎が組み合ったらどんな化学変化が起きるだろうと、今ドキドキしています。あ! やっぱり歌舞伎だなと思えるようになったらいいですね」と目を輝かせた。

また、演出アイデアを問われた場面で、串田の「遠い昔の物語ではなく、私たちの物語にしたい」という言葉に、木ノ下がうなずいた。「僕が思う一つのテーマは“傷”。与三郎がどんどん傷を負いながら、流転していくという長いお芝居なんですが、傷にはネガティブなイメージでもあるけど、何かの痕跡でもある。お客様も、自分たちの傷ってなんだろうと思いを馳せられるホンになれば」と構想の一端を垣間見せる。

さらに「10年くらいのスパンのお芝居なんですが、周りの町が変わっていくんですね。与三郎の環境も立場も変わっていく描写がたくさんあるので、町から取り残された与三郎というイメージもある」と続ける。「喉元過ぎれば熱さ忘れるというか、時代が変わっていくと、あんなに大変だったもの、傷っていろいろ忘れやすいもの。与三郎が、社会全体の傷も背負っているという読み方もできるホンにしたい。その上で串田監督のさまざまなイメージが加わって、私たちの物語になれば」と熱く作品に向かい合っているようだ。

この記事の写真

  • コクーン歌舞伎『切られの与三』会見 1 左から、木ノ下裕一、中村梅枝、中村七之助、串田和美
  • コクーン歌舞伎『切られの与三』会見 2 串田和美
  • コクーン歌舞伎『切られの与三』会見 3 木ノ下裕一
  • コクーン歌舞伎『切られの与三』会見 4 中村七之助
  • コクーン歌舞伎『切られの与三』会見 5 中村梅枝
  • コクーン歌舞伎『切られの与三』会見 6 左から、木ノ下裕一、中村梅枝、中村七之助、串田和美

インフォメーション

渋谷・コクーン歌舞伎 第16弾
『切られの与三』

【スタッフ】作=瀬川如皐「与話情浮名横櫛」より 補綴=木ノ下裕一 演出・美術=串田和美
【キャスト】中村七之助/中村梅枝/中村萬太郎/中村歌女之丞/中村鶴松/真那胡敬二/笹野高史/片岡亀蔵/中村扇雀

2018年5月9日(水)〜31日(木)
・会場=Bunkamuraシアターコクーン
・チケット発売中
・料金=全席指定1等席13,500円/2等席8,000円/3等席4,000円/立見A(当日券のみ)3,500円/立見B(当日券のみ)2,500円

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