山田洋次監督「母と暮せば」が舞台化 こまつ座「戦後“命”の三部作」記者会見 - 2018年4月 - 演劇ニュース - 演劇ポータルサイト/シアターガイド
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こまつ座「戦後“命”の三部作」会見 1 左から、山田洋次、伊勢佳世、山崎一、鵜山仁

▲ 左から、山田洋次、伊勢佳世、山崎一、鵜山仁

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井上ひさしの遺志を受け継ぎ、山田洋次監督により制作された2015年の映画「母と暮せば」が舞台化。『父と暮せば』『木の上の軍隊』に次ぐ「戦後“命”の三部作」が舞台作品として完成する。

6月上演の『父と暮せば』演出・鵜山仁、出演・山崎一&伊勢佳世、そして、「戦後“命”の三部作」を命名した山田監督が顔をそろえての記者会見が、紀伊國屋ホールにて行われた。

広島に暮らす娘・福吉美津江と、彼女の“恋の応援団長”として現れた父・竹造が織り成す、壮絶な命の会話を通して平和の尊さ訴えた『父と暮せば』。広島の被爆者の膨大な手記を編み込んだ、井上ひさしの代表作で、1994年の初演から上演を重ねている、こまつ座のライフワークとも言える作品だ。

そして、『母と暮せば』は、生前に井上が語っていた「広島を舞台にした『父と〜』と対になるような、長崎を舞台とした作品を書きたい」という構想をもとに、山田監督がつくり上げた映画作品。1948年の長崎を舞台に、助産婦として暮らす母と、原爆で死んだ息子の亡霊の交流がつづったものだ。山田監督は、同映画と『父と〜』『木の〜』を併せた3作品に「戦後“命”の三部作」と命名した。

そしてこのたび「母と〜」が、畑澤聖悟作、栗山民也演出、富田靖子&松下洸平出演の顔合わせにより二人芝居として舞台化。10月より紀伊國屋ホールほかにて、全国にて上演される。

会見での主なコメントは以下の通り。

■鵜山仁
24年前に『父と暮せば』初演を演出しました。こまつ座では7本の新作書き下ろしの演出をやっているんですが、ちゃんと開いたのは『父と暮せば』だけでした(笑)。初演の広島公演の時には、すまけいさんと梅沢昌代さんから「どの面下げてこの作品を広島でできるのか」とすごく絡まれまして(笑)、それほどにこの作品を背負うことが、いろいろな意味で重かったのだと感じました。2001年のロシア公演では、沖恂一郎さんと斉藤とも子さんが、楽屋で「この話を伝えられるのは私たちしかいない」と、自分たちが語り部でないくはいけないという決意を聞いて心強く思いました。
2004年には、辻萬長さんと西尾まりさんの香港公演がありました。この作品は、日本人だけが被害者ではない、もっと普遍的なテーマであることは分かるけど、いかんせん中国でやるならば、日本人が中国に対してやったことと、二本立てでないとお客さんは納得しないのでは言ったこともありました。
そうして作品は24年という齢を重ねてきました。確か、初演が開けた時は「この作品を20年よろしくお願いします」と言われた覚えがあるんですけど、作品は生き続けて、ここまでに至りました。かつては、僕らは美津江の目線で芝居を感じていたけど、いつの間にか竹造の目線にシフトしていました。
僕は戦争を知らない世代ですが、今回初めて、僕より年下の福吉竹蔵(山崎)が出現するということで、われわれの知らない戦争をどう伝えるかは、いろいろ思うところもあるし、なかなか困難なことだろうとは思います。ただ、大きなことを言えば、伝説のトロイ戦争を、2500年前の現代劇に仕立てた、当時のギリシャの演劇人たちパワー、そして、井上さんがよくおっしゃる“芝居の力”を借りて、われわれの表現力を進化させるしかありません。なんとかこの話を語り継いでいきたい。「“命”の三部作」というヒントをいただいたので、命が輝いていることの素晴らしさを表現したいと思います。

■山崎一
この話をいただいた時にすごくうれしかったんです。ただ同時に、ものすごく不安とプレッシャーを感じました。この作品は、井上作品の中でも、名作中の名作。なおかつ、演じた俳優さんたちは名優ばかりで、果たしてこの役が僕にできるだろうか? という気持ちが大きく膨らんで、しばらく悩みました。
しかし、ある日、ふとそんなに気負わなくていいのではと思えてきたんです。僕らは僕らの『父と暮せば』をやればいいのでは、何千何万の竹造と美津江の物語があっていいんじゃないかと。
そして、もう一つ大きく動かされた言葉がありました。それは、井上さんが前口上として書かれている言葉です。「二つの原子爆弾は、日本人の上に落とされたのみならず、人間の存在全体の上に落とされたものと考えている。被爆者は核から逃れることのできない、われわれ20世紀後半の人間の代表として、あの地獄の火に焼かれたんだ。その地獄を知っていながら、知らぬふりはできない。だから私はこれを書く」とあって、その言葉にすごく感動しました。未熟だけど、微力だけど、一生懸命、竹造を生きようと思ってます。まあ死んでいますけど(笑)、どうぞよろしくお願いします。

■伊勢佳世
この作品は、これまでとてもすてきな先輩方が演じてこられた作品なので、プレッシャーはもちろんあるんですが、私にはとても頼もしい山崎さんと鵜山さん、すてきなスタッフの方々がいるので、できるだけ楽しんでつくっていけたらと思っています。
これまで、私は幸運なことに、戦争を題材にした作品を何本かやらせてもらっていて、そのたびに壁にぶつかって、とても苦しんできました。終わると体も心もボロボロで、毎回寿命が縮まると思っていて、そのことを梅沢昌代さんにお話したら、同じように思ってやっていたとおっしゃれられていました。今回も寿命が縮まる気持ちで、役をしっかりと演じていけたらいいなと思っています。
作品は戦争が題材ですが、父と娘の愛情のある温かいお話がとても印象的です。それを大切に演じて、いろいろな世代の方に見てほしいなと思っています。

■山田洋次
死者が亡霊となって現れて、生き残った人と会話を交わすという形は、古い昔から劇作者にとって非常に魅力のある形で、舞台にも、映画にも亡霊が登場する傑作はたくさんあります。井上ひさしさんは、亡霊の父と生者の娘のドラマを二人芝居という、大変難しい形での戯曲を書かれました。しかも、ユーモアを交えて、重く激しい主題を秘めながら、軽やかに描けるのは井上さんが天才だからであり、井上さんにしかできないとつくづく感心していました。
4年前に「母と暮せば」の映画を委ねられた時は、「喜んで」というより、「僕がつくらないといけない」と勇んで引き受けたし、吉永小百合さんも二つ返事で引き受けてくれました。今度はそれを井上さんの遺志通り、二人芝居として舞台化するという企画。これは大変なチャレンジですが、畑澤聖悟さんは、僕とは違う魅力的な脚本をつくってくれると心から期待しています。
この三部作が、これからも繰り返し上演されることが、今のこの国に、そして戦争の匂いがプンプンとする世界にとって、非常に大事なことだと、観客もそういう意識を持って熱烈に迎えてくれるに違いないし、それに匹敵する『母と暮せば』をぜひともつくってもらいたいと思います。

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  • こまつ座「戦後“命”の三部作」会見 1 左から、山田洋次、伊勢佳世、山崎一、鵜山仁
  • こまつ座「戦後“命”の三部作」会見 2 井上麻矢
  • こまつ座「戦後“命”の三部作」会見 3 鵜山仁
  • こまつ座「戦後“命”の三部作」会見 4 山崎一
  • こまつ座「戦後“命”の三部作」会見 5 伊勢佳世
  • こまつ座「戦後“命”の三部作」会見 6 山田洋次
  • こまつ座「戦後“命”の三部作」会見 7 左から、井上麻矢、山田洋次、伊勢佳世、山崎一、鵜山仁、高井昌史

インフォメーション

こまつ座 第122回公演
『父と暮せば』

【スタッフ】作=井上ひさし 演出=鵜山仁
【キャスト】山崎一/伊勢佳世

2018年6月5日(火)〜17日(日)
・会場=俳優座劇場

こまつ座 第124回公演
『母と暮せば』

【スタッフ】監修=山田洋次 作=畑澤聖悟 演出=栗山民也
【キャスト】富田靖子/松下洸平

2018年10月
・会場=紀伊國屋ホール

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