尾上右近が初現代劇に奮闘 『ウォーター・バイ・ザ・スプーンフル』記者会見 - 2018年6月 - 演劇ニュース - 演劇ポータルサイト/シアターガイド
サイト内検索
すべて|
公演名|
人名・劇団名|
劇場|
演劇ニュース
様々な条件で検索
こだわり検索
注目キーワード

演劇ニュース

このエントリーをはてなブックマークに追加
ニュースを購読する
『ウォーター・バイ・ザ・スプーンフル』会見 尾上右近(左)とG2

▲ 尾上右近(左)とG2

ギャラリーで見る(全5枚)


歌舞伎俳優・尾上右近が、G2とのタッグで翻訳現代劇に初挑戦する、PARCOプロデュース2018『ウォーター・バイ・ザ・スプーンフル〜スプーン一杯の水、それは一歩を踏み出すための人生のレシピ〜』。本作の記者会見が、都内の稽古場にて行われた。

本作は、トニー賞受賞作『イン・ザ・ハイツ』の脚本を手掛けたキアラ・アレグリア・ヒュディスが、2012年にピュリツァー賞を受賞した戯曲。薬物に救いを求めることになってしまった人びとが、本当に望んでいたもの、そして、立ち直った後にどう生きるか迷い悩む姿を描いたものだ。

翻訳・演出を手掛けるG2は「長年舞台の仕事をしていると、“やらねばならない作品”と“やっておかねばならない作品”があるもの。前者はどんどん目の前に現れるけど、今回は久々に“やっておかねばならない作品”に出会えたし、ぜひ“やっておきたい作品”でもある。つくることで、自分自身、あるいはカンパニーのメンバーを変える、アウトプットだけでなく、インプットにもなりえる作品」と思い入れを明かす。

また「斬新な手法ではないけど、新たな切り口・方法論と感覚で書かれている。読んだ時に『お前ならどう演出するつもりだ?』とニヤリと笑われたような気がした」と気を引き締め、「ほとんどの登場人物がプエルトリカンで、黒人、白人、日本人も入り、人種のるつぼのような作品。アメリカの特殊な環境を描いているけど、とても普遍的な力を持っている。今回は、日本人にも共感するであろう部分をクローズアップして上演したい」と語った。

右近は「“新人”の尾上右近です(笑)。社会派の現代劇に初挑戦・初主演というのは、困難を極めるものだと覚悟の上での挑戦。共演者やG2さん、百戦錬磨の先輩方が『難しい』と言いながら表現する姿を見て、途方に暮れる毎日です(笑)」と冗談交じりのあいさつだったが、「でも、これがきっと自分の糧になる。自分が“危険な道”に進みやすい性格だと、受け入れた上で、乗り越えないといけない試練。むしろ乗り越えるかというより、壁にぶち当たって打ち砕くつもり」と気合十分だ。

ほかの歌舞伎俳優たちからは、他ジャンルでの活動において「歌舞伎に返す」という言葉を聞くことがあるが、右近にとっては今回の出演に「対外的に相乗効果を見ていただくのも大事だけど、まずきちっと向かって結果を出すのが大事。純粋に経験したいという気持ちで、自分の人生に広がりを持ちたいというのが本心」と意欲的な姿勢を見せた。

現在、進行中の稽古には「歌舞伎では演出家はいないし、腑に落ちる、腑に落ちない、関係なく、有無を言わさず、通し稽古から始めるのが通常のスタイル。そして基本的に、役づくりは自己管理。自分たちで考えるもの」と、これまで行ってきた歌舞伎と比較しながら、「『分からないことは、分からない』と言い、自分で抱えずに、アウトプットするのが非常に大事。疑問をぶつけられるのは新鮮だし、逆にぶつけていかないと広がりを持たないし、自分がやる意味がない。そういう習慣がないぶん、その方法に慣れるのがまず一つ課題」と述べた。

さすがに、初めてのチャレンジには「ホン読みから戸惑うことがたくさんあったし、初めての立ち稽古では、セリフを言うことに追われてしまって、気付いたら漫才のように並んで喋っていたり(笑)。それくらい何も分からない。やってみないと何が分からないのか分からないくらい」と格闘しているよう。

そんな自身の姿を話しながら「恥ずかしいことがたくさんあるけど、若いうちにこういう経験がさせてもらえるのはありがたい。恥をかくのが好きなので、うれしく思います(笑)。皆様にはご迷惑をおかけしますが、習得することが、この機会をいただいたことへのご恩返し。1日1日、成長することを信じて稽古に励んでいます」と姿勢を正す。

共演者の南沢奈央には、右近は「一緒にお稽古する時間が一番長く、一番“被害を被っている”」と話したが、「僕の悩む姿をちゃんと受け止めて、一緒に考えて悩んでくださる。役としても頼る部分が多くリンクしているので救いになっている」と信頼を寄せる。

そのほかにも、篠井英介には「本当にお母さんのような(笑)、愛にあふれる包容力をお持ちの役者さん」、葛山信吾には「意外とイジられキャラ(笑)。何やらカラオケでは、すごい力を発揮される秘密があるらしくて、早く目の当たりにしたい(笑)」など、それぞれにコミュニケーションを重ねているようで、稽古場の充実ぶりを垣間見せた。

そう話す右近の姿に、G2は「もちろんまだ不慣れなところがあるけど、非常にチャレンジングで、とっても勉強して稽古場に来てくれるのは頼もしい。何よりとても意欲的なのは、僕も見習わねばと刺激になる」と太鼓判。「とにかく、やる気の塊。違うジャンルから来てもらえるのがうれしい。ケレン味があるような舞台ではないし、役者自身の本質に迫る、内面の作業が多い作品ですから、多くのディスカッションから新たな刺激をもらうもの。全然違う素養を土台にした人が参加して、どのような形になるか、逆に読みきれない部分が楽しい」と相乗効果を生んでいるようだ。

右近も、異ジャンルから参戦する立場として「歌舞伎で培ったものが自然に生きるのが願わしい。話の中にジョン・コルトレーンの“不協和音”が出てくるんです。ジャズでは、不協和音が一つの音のハーモニーとして成立するのですが、この芝居も“見るジャズ”というか、それぞれの登場人物の個性がまったく違っていて、不協和音かもしれない混じり合いが、一つの不思議なハーモニーになっていく。そういうお芝居の中で、歌舞伎の世界から来ている自分によって、何か新たな、不思議なメロディーが誕生すれば、自分がやる意味がある」と熱弁した。

それぞれに語る様子から、稽古場での奮闘が伺えるが、G2は「『難しい』とは言っていますが、あくまで難しいのは演じる側。お芝居自体は難しくはありません」と述べる。「90年代のコカイン流行の余波や、イラク戦争帰還兵の若者たち、昨今のネット社会とか、いろいろな問題を背景にしている社会派作品ですが、悪いことを掘り返す話ではなく、その社会に居る弱者たちが、いかに関わって、いかに新しい明日へ向かって歩き始めるか? という観終わった後に勇気をくれる良い作品。気軽に観に来てくれたら、とっても楽しい演劇体験できる」と見どころをアピールした。

右近も「そうでした。観る方は難しくないですよね」とうなずきながら、「“劇的じゃない劇”という感想でしたが、だからといって、魅力がない芝居ではない。国境や人種も、全然違う人たちのつながりが奏でるメロディーが非常に魅力的。ドラッグやネットが題材ですが、そこには、人の心のぬくもり何より伝わる。ぜひ感じて、豊かな気持ちになっていただけたら」とメッセージを送った。

この記事の写真

  • 『ウォーター・バイ・ザ・スプーンフル』会見 尾上右近(左)とG2
  • 『ウォーター・バイ・ザ・スプーンフル』会見 2 G2
  • 『ウォーター・バイ・ザ・スプーンフル』会見 3 尾上右近
  • 『ウォーター・バイ・ザ・スプーンフル』会見 4 G2(左)と尾上右近
  • 『ウォーター・バイ・ザ・スプーンフル』会見 5 尾上右近(左)とG2

インフォメーション

『ウォーター・バイ・ザ・スプーンフル〜スプーン一杯の水、それは一歩を踏み出すための人生のレシピ〜』

【スタッフ】作=キアラ・アレグリア・ヒュディス 翻訳・演出=G2
【キャスト】尾上右近/篠井英介/南沢奈央/葛山信吾/鈴木壮麻/村川絵梨/陰山泰

■東京公演
2018年7月6日(金)〜22日(日)
・会場=紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA
・チケット発売中
・料金=全席指定8,000円/U-25チケット4,000円(当日指定席引換、要身分証明証、ぴあ・パルステ!前売のみ)

■大阪公演
2018年8月4日(土)
・会場=サンケイホールブリーゼ
・チケット発売中
・料金=全席指定8,000円

関連サイト

トラックバック

この記事のトラックバックURL

http://www.theaterguide.co.jp/mt/mt-tb.cgi/10002